「プロファイ」+「私募債」で、自己資金を節約

 「矢吹太陽光発電所」は、そうした、一目で分かるパネル配置の工夫のほか、完成した施設だけを見ても分からない、いくつかの先進的な特徴を持っている。

 まず、ファイナンス面では、プロジェクトファイナンスを組成する際、一般的に多いSPC(特定目的会社)の設立でなく、信託スキームを活用した。発電所のオーナーはアドバンテックで、完成後のアセットマネジメントも主導するが、発電設備を信託することで、発電事業者は信託会社になる。

 加えて、「私募債」を発行して他社に引き受けてもらい、資金調達したことも先進的な金融手法だ。私募債とは、証券会社を通じて一般に募集する公募債とは異なり、少数の投資家が直接、引き受ける社債のこと。返済順位が銀行借り入れより劣後し、出資(エクイティ)より優先する、融資と資本金の中間的な資金(メザニン)の一形態となる。

 また、技術面の特徴としては、ゴルフ場跡地を造成せず、「3D CAD」(コンピューターを使った3次元設計)によるシミュレーションを繰り返し、起伏ある用地にパネルを最適に配置した(図4)。ゴルフ場の跡地にメガソーラーを建設する場合、新たな開発許可が必要にならないよう、大規模に造成しないことが多いが、それでも荒造成で地面を平坦にすることが多い。矢吹太陽光発電所は、ほとんど造成しないで、パネルを効率よく配置した。その背後には、ITによる設計技術がある。

図4●「3D CAD」によるシミュレーションを活用した(出所:アドバンテック)
図4●「3D CAD」によるシミュレーションを活用した(出所:アドバンテック)
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 O&M(運営・保守)に関しては、ストリング(パネルの直流回路)ごとの発電量監視システムとパフォーマンスレシオ(PR:出力係数)による発電量評価を導入している。アドバンテックは、O&M専門の子会社としてクールアース(東京都千代田区)を設立し、ノウハウを蓄積している。