日々の血圧や脈拍などの「生体情報(バイタルデータ)」、運動や食事などの「生活情報」、そして「遺伝(ゲノム)情報」。これらのデータを、個人の体質や生活習慣に合わせた病気の予防や早期発見、効果的な治療につなげる「医療ビッグデータ」。このうち、行政や医療現場、産業界を巻き込んだ大きな動きが2015年にあったのは、ゲノム情報の分野である。

 基礎研究の段階から、実臨床やサービスへ――。ゲノム情報の分野で今起きているのは、このようなパラダイムシフトだ。

 例えば、これまでは医学研究や医薬品の開発に限って使われてきた、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析。これを日常診療に導入し、個人の体質や遺伝情報に合わせた個別化医療を実現する「クリニカルシーケンス」に向けた動きが2015年に本格化した。

クリニカルシーケンスの臨床研究始まる

 2015年11月、国立がん研究センターは臨床検査の国際基準に準拠した品質管理に対応できる遺伝子検査室を同センター 中央病院に設置すると発表した(関連記事1)。同検査室を舞台に、次世代シーケンサーと日本人向けがん検査キットを使った臨床研究が2016年1月に始まる。

次世代シーケンサーと日本人向けがん検査キットを使った臨床研究を始める
次世代シーケンサーと日本人向けがん検査キットを使った臨床研究を始める
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 現在、日本の日常診療に使われている遺伝子検査は、薬剤の効果や副作用に関連する特定の遺伝子を調べる「コンパニオン診断」と呼ばれるもの。遺伝子を網羅的に調べるクリニカルシーケンスは米国などで一部始まっているが、日本では導入が進んでいない。今回の臨床研究ではこの後れを取り戻すべく、2018年の診療報酬改定において「必要なデータをそろえて厚生労働省に提示することを目指す」(国立がん研究センター)。