LTE回線で遠隔制御を可能に

 2016年下期には、大手携帯電話通信事業者が相次いで、携帯電話回線を使ったドローンの遠隔制御の実証実験を実施した。オペレータの目視範囲外でも飛行できるようにするためだ。Wi-Fi経由でも遠隔制御は可能だが、その場合、ドローンの飛行できる範囲はわずか半径100mほどに限られる。LTE回線を利用できれば、地球の裏側やクラウド経由でもドローンの制御が可能になる。

 現行の航空法では目視外の飛行は原則認められていない。電波法上も、上空を飛行するドローンで携帯電話通信を利用することは、認められていない。しかし総務省は2016年7月に電波法施行規則の一部を改正する省令案を施行し、規制を緩和した。具体的には、通信事業者が上空で携帯電話通信を使った試験を行うことを認める「無人航空機における携帯電話等の利用に係る実用化試験局の免許」を創設した。

 これを受けていち早く動き出したのが、NTTドコモだ。2016年9月6日に実用化試験局免許を取得した同社は、自律制御システム研究所のドローンにスマートフォンを搭載し、神奈川県横須賀市にあるNTTドコモ R&Dセンタの敷地内で実験を実施。その後、2016年11月には、エンルートやMIKAWAYA21と共同で、福岡県の離島である能古島に日用品を届ける実証実験を実施した(図1)。

図1 NTTドコモが福岡県能古島の実証実験で用いたドローン
図1 NTTドコモが福岡県能古島の実証実験で用いたドローン
エンルートが開発した。マーカーを認識するとワイヤーで荷物を釣り下げて降ろす。
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 KDDIはプロドローンやゼンリンと共同で、LTE回線などを使ってドローンを自律飛行させるための基盤「スマートドローンプラットフォーム」を開発すると発表。建物やドローン同士の衝突回避などの機能も持たせる。2016年11月15日付けで実用化試験局の免許を取得した。会見では、名古屋市にあるロボットハンド付きのドローンを、233km離れた東京の会場から遠隔操作し、救助者に救命機器を届けるといった模擬実験を披露した(図2)。

図2 KDDIらが披露したLTE回線経由による遠隔操縦のデモ
図2 KDDIらが披露したLTE回線経由による遠隔操縦のデモ
プロドローンが開発した2本のロボットハンド付きのドローンを用いた。右の男性がドローンのカメラ映像を見ながらタブレット端末で操縦。中央の男性は、ドローンのハンドを制御するためのグローブを用い、救命機器をつかんで救難者に届けた。
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