高まる「化石」への圧力

 近年、化石燃料の使用に対する圧力が急速に高まっている。例えば、政策や規制の進展、化石燃料への助成金や補助金の廃止、及び化石燃料を大量に使用する企業からの「ダイベストメント(投資撤退)」などが挙げられる。

 政策や規制の観点での近年の動向として、例えば、欧州を中心とした国々による「ガソリン車販売禁止」に関する発表がある。特に自動車メーカーは、「環境対応」というよりもむしろ、事業戦略そのものの見直しが迫られている。ガソリン車販売禁止を発表した国の例は以下の通りである(図2)。

図2●ガソリン車販売禁止を発表した国々
図2●ガソリン車販売禁止を発表した国々
(出所:報道発表に基づき筆者作成)

 また、「カーボンプライシング」の検討、または導入の進展が挙げられる。「カーボンプライシング」とは、温室効果ガス排出への「価格付け」であり、温室効果ガスを排出するほどコスト負担が増え、排出の少ない組織や低炭素製品・サービスを提供する組織が競争力を持つ仕組みである。

 具体的には「炭素税」や「排出量取引制度」などが挙げられる。カーボンプライシングは既に様々な国や地域で導入されている。今後、欧州を中心として、炭素税率の値上げが計画されている。最近のトピックスとしては、2013年より7都市において排出量取引の試行事業を行っていた中国が、2017年12月19日に、全国排出量取引制度を開始したことが挙げられる。

 この制度の対象となる企業の排出量は年間約35億tに達し、日本の排出量の約3倍、EU-ETS(欧州排出量取引制度)が対象とする排出量の約2倍で、世界最大の排出量取引市場となった。今後、企業が中国においてビジネスを展開する際、大きな影響が生じるものと想定される。

 企業の動向としては、将来的なカーボンプライシングの導入/強化を想定し、千数百社が「内部炭素価格付け」を実施または実施を表明している。「内部炭素価格付け」とは、端的に言うと、「将来のカーボンプライシングを想定した事業運営」といえる。

 例えば、プロジェクト実施の際、将来的なカーボンプライシング(例:3000円/t-CO2)を想定して、温室効果ガスの排出に「仮想内部価格」を設定し、プロジェクトコストの試算やプロジェクト実施を判断する方式や、実際に社内各部門に炭素税を課し、回収資金を活用して更なる低炭素設備投資を行う方式などがある。