本記事は、情報処理学会発行の学会誌『情報処理』Vol.57, No.1に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには情報処理学会の会員登録が必要です。会員登録や全文の閲覧に関してはこちらから(情報処理学会のホームページへのリンク)

それなに?

 「ロボットは東大に入れるか」(以下、東ロボ)は国立情報学研究所を中心とする研究プロジェクトである。「東ロボ」では、大学入試試験問題を自動的に解くソフトウェアの開発を行っている。その狙いは、言語処理および人工知能関連技術を総ざらえし、問題テキストの解析から分野特有の演繹、そして解答の生成までを含めた統合的な知的処理課題をベンチマークとして、今後10年の言語処理・AI関連技術の伸びしろと限界を見極めることにある。プロジェクトの目標は2016年度にセンター試験で高得点を獲得し、2021年度に東大合格レベルに到達することである。

どうやるの?

 試験問題には図・表・イラストなども含まれるが、その中心は自然言語テキストである。このため、各科目とも言語処理が自動解答の基盤となっている。その一方で、問題に解答するためには、言語理解に加えて推論、数値解析、教科書など知識源の検索、画像理解といった種々の技術が必要となる。「東ロボ」の技術的目標の1つは、これらの知的情報処理技術と言語処理の接合を通じて、計算機による課題解決の基盤として頑健に動作する言語処理技術を確立するとともに、言語理解との接合によって種々の知的情報処理の間口を格段に広げることにある。