筆者(写真)が副議長を務めているGlobal Smart Grid Federation(GSGF)によって、電力系統への適用を前提とした、大型蓄電池の活用に関する白書がまもなく発表される。この系統用大型蓄電池に関する白書は、一般的には高価ゆえに本格的な大量普及は当面先と考えられている系統用の大型蓄電池について、各国における蓄電池の導入事例や、中でも経済的に成立している用途を取り上げた上で、電力システムに関する制度変更などによる蓄電池市場の拡大の可能性を検討している。本連載では、この白書におけるポイントを3回に分けて紹介する。

 連載第1回目は、再生可能エネルギーの普及により必要となる電力システムの変化と、蓄電池に期待される新たな役割について説明したい。

 日本では、エネルギー安全保障、環境配慮、経済成長などの観点から、再生可能エネルギーの普及拡大が進められてきた。固定価格買取制度(FIT)の導入などにより、近年その導入伸び率は上昇しており、今後も電源構成における再生可能エネルギーの割合を拡大させるため、政府としても各種規制の対応や技術開発を行うこととしている。

 このように再生可能エネルギー導入の機運が高まる一方で、その普及拡大に伴い、現在電力システムには需給の調整に大きな問題が生じている。安定的に電力を提供するためには、系統内の電力供給と需要の量を常に一致させる必要がある。系統内の需要と供給に大きな差が生じると、周波数に大幅な変動が生じ、最悪の場合には停電が引き起こされる可能性もあるためだ。

 このような事態を防ぐために、従来の系統運用では、需給の調整が必要となった場合は、供給側(主に出力変動が容易な火力発電所)による調整が行われてきた。しかし、再生可能エネルギーの普及拡大とともに、今までの電力需要の変動に加えて、供給側に設置された太陽光発電なども変動(しかも予測困難な変動)が生じることが予見される。さらに、太陽光発電の家庭への普及など、需要家の多数が発電設備を有するようになると、従来のような発電事業者と需要家という単純な区分ができなくなるため、今後の電力系統運用の複雑化が予想される。