本記事は、エレクトロニクス実装学会発行の機関紙「エレクトロニクス実装学会誌」Vol.20 No.7 pp.442-448に掲載された「パワーエレクトロニクス産業の動向とパワーデバイス実装への要求」の抜粋です。全文を閲覧するにはエレクトロニクス実装学会の会員登録が必要です。会員登録、当該記事の閲覧は、エレクトロニクス実装学会のホームページからお進みください。

1. はじめに

 現在量産されているパワーデバイスのほとんどは、Siを用いて製造されている。Siパワーデバイスは、Si集積回路とは構造および一部の製造プロセス条件が異なるものの、製造装置の多くは互換性があり、集積回路で開発された成果を適用することにより急速に性能が向上し、量産体制を確立してきた。一方、Siパワーデバイスは性能向上の限界が近いと言われ出した。そのため、パワーデバイスとしての優れた物性値を有するワイドギャップ半導体(WGS: WideGap Semiconductor)であるSiCおよびGaNを用いたデバイスが次世代パワーデバイスとして期待されている。実際に試作されたデバイスの特性は非常に良好である。

 しかしながら、究極に近い状態まで洗練されてきたSiパワーデバイスに対し、SiCおよびGaNパワーデバイスの試作量産から真の量産への移行には課題が多い。SiCおよびGaNパワーデバイスの課題は、結晶製造技術、チップ製造技術および特性、モジュール構造および製造技術、さらには高速動作対応の周辺部品と広範囲にわたる。とりわけモジュール構造および製造技術は、高耐圧、大電流通電性能および高速動作に加え、高温動作が1つの特長であるWGSパワーデバイスにとって、実用化のための非常に重要な開発要素である。

 本稿では、WGSパワーデバイスへの期待と課題、さらにパワーデバイスの高温動作対応モジュールに対する実装技術への要求について述べる。