――膨大な量のデータをどのように選手に伝えているのか。

フィセッテ 選手はコート上で孤独だ。次のポイントに集中するあまりに、試合の流れを俯瞰できないことも多い。そこでコーチは、試合全体の流れを見ながら戦術を立てる。

 その際、どのデータを選手に見せるか、見せないかを決めるのはコーチの重要な役割だと思う。SAP社はアプリを設計する前に、我々が何を見たいかについてきちんとヒアリングしてくれた。だから、我々にデータを絞った形で提供してくれる。

―― 例えば、サービスに関するデータの画面から何を読み取っているのか。

フィセッテ 対戦相手のサーブの傾向が分かる。例えば、相手のほとんどのサーブがバック側に入っている際は、自分の選手に「フォア側は気にしなくていい」と指示を出せる。逆にこれが自分の選手のサーブなら「単調すぎるのでバリエーションを増やせ」と言う。

 

―― 選手によってデータを参考にする人とそうでない人がいるのか。

 

フィセッテ 選手によってデータに対する向き合い方は違う。アザレンカ選手は詳細なデータを欲しがり、それを実際に使いこなしている。一方、コンタ選手はまったく異なり、感覚的にプレーする。だから、アザレンカ選手と同様の膨大なデータを与えることはできない。このように、コーチはどのような選手にも対応できるよう、やり方を変える必要がある。