NTTデータは、2016年9月にVR(仮想現実)技術を用いたプロ野球選手向けトレーニングシステムを発表した。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着すると、あたかも自身が実際のバッターボックスにいるかのような状態となり、投手の投球を仮想体験できる。プロ野球チーム「東北楽天ゴールデンイーグルス」を運営する楽天野球団がファーストユーザーとして2017年シーズンから本格利用する。

VRトレーニングシステムの視聴イメージ(図:NTTデータのプレスリリースより)
VRトレーニングシステムの視聴イメージ(図:NTTデータのプレスリリースより)

膨大なセンサーデータで得られた情報を高い臨場感で体験

 ICT技術の進展によってスポーツ業界では近年、競技中の映像やスコアデータだけでなく、競技中の選手の動きやボールの移動軌跡など、より精緻かつ大量のセンサーデータを取得することが可能になった。その一方、大量のセンサーデータを直感的にフィードバックするのは難しく、ダッシュの速度や回数、ボール保持時間など比較的単純な統計情報の利用に限られることが多かった。そこで今回、NTTメディアインテリジェンス研究所が開発した「スポーツ一人称視点合成技術」を活用して、膨大なセンサーデータから得られた情報を高い臨場感で体験できるトレーニングシステムを開発した。

 同システムでは、全周囲映像データを基に、競技中には撮影できない視点での3次元の野球場空間を合成。この空間上に投手の投球映像データを実写で提示し、あたかも打席に立った目線で投球を視聴できる。さらに、楽天野球団が独自に取得した投球データを、3次元位置へ正確に合成することで、個々の選手ごとに異なる打席内での立ち位置やスイング中の頭部位置の変化に対して、常に正確なボールの軌道を再現した。

今江敏晃選手のトレーニング模様(写真:NTTデータのプレスリリースより)
今江敏晃選手のトレーニング模様(写真:NTTデータのプレスリリースより)