プロ野球の試合を、スタジアムに行かなくても自宅などでのVR(仮想現実)空間で楽しめるライブ配信サービスが国内で始まった。KDDIと傘下のSupershipは2018年7月27日、同日開催された北海道日本ハムファイターズ対オリックス・バファローズの試合を「パーソル パ・リーグTV VR」(パシフィックリーグマーケティングが提供)として3次元映像でライブ配信した。

KDDIとSupershipが2018年7月25日に開催した記者発表会の様子。左はSupership代表取締役社長の森岡康一氏、中央はKDDI ビジネス統括部部長の繁田光平氏。右のモデルの女性のようにVRゴーグルをかけて観戦する
KDDIとSupershipが2018年7月25日に開催した記者発表会の様子。左はSupership代表取締役社長の森岡康一氏、中央はKDDI ビジネス統括部部長の繁田光平氏。右のモデルの女性のようにVRゴーグルをかけて観戦する
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 VRのゴーグルを使って、テレビ中継では見られないアングルの映像も含めて5つの視点を自由に切り替えて観戦できるほか、同じ試合を観戦しているユーザー同士でコミュニケーションを取ったりして楽しめる。

 7月27日の同試合を皮切りに、パ・リーグの2018年シーズンの試合を30以上ライブ配信する予定。VR観戦に必要なアプリ「XRstadium」は無料で入手できるが、観戦には1試合当たり500円がかかる。

観戦者同士でテキストチャット

 国内でテレビが普及して50年以上、スポーツ観戦の主役は「放送」だった。それは今でも変わらないが、今後成長するのは間違いなくOTT(over the top)と呼ばれるネット配信である。英パフォーム・グループが展開するスポーツ配信の定額サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」が、国内でサービス開始から1年で100万件以上の会員を獲得するなど、すでに“市民権”を得ている。

 一方、VR技術を使った配信は専用のゴーグルをかけて視聴することで、通常のOTTよりもスタジアムの臨場感を伝えられるほか、上記のように複数視点を切り替えたり、遠隔地にいる観戦者とコミュニケーションを取ったりと付加価値を提供できる。ビジネス化の期待は大きいものの、これまではVRゴーグルがあまり普及していない、スポーツリーグやチームの許諾など権利処理に手間がかかるなどの理由で、実験段階にとどまっていた。

 今回、パーソル パ・リーグTV VRでは、パ・リーグ6球団による合弁企業で主にデジタルマーケティングを担当するパシフィックリーグマーケティングの協力の下、映像を撮影するビデオカメラと配信用のパソコンをスタンドの5カ所に設置、VR化するサーバーに映像を送ってコンテンツを生成・配信している。5カ所とは、「バックネット裏」「ホーム1塁ベンチ付近」「ライト」「センター」「ビジター3塁ベンチ付近」である。実際の観戦では座席は固定だが、ユーザーは5カ所からの視点を自由に切り替えて楽しめる。

パーソル パ・リーグTV VRでは「バックネット裏」「ホーム1塁ベンチ付近」「ライト」「センター」「ビジター3塁ベンチ付近」の5つの視点で試合を楽しめる
パーソル パ・リーグTV VRでは「バックネット裏」「ホーム1塁ベンチ付近」「ライト」「センター」「ビジター3塁ベンチ付近」の5つの視点で試合を楽しめる
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