そこで実験的に、EX-FS10のソフトウエアを一部改良してディスプレー上にラインを引く機能を搭載したゴルファー専用モデル「EX-FS10S」を同年秋に投入した。案の定、熱心なゴルファーから反響があり、それ以降は毎年、新製品の主力モデルのソフトウエアを改良したゴルファー専用モデルを発売していった。

 そして「GoPro(ゴープロ)」が開拓したアクションカメラという新市場に向けて、2014年に発売した分離型デジカメ「EX-FR10」が、EX-SA10 GSET誕生のきっかけになった。EX-FR10はレンズ、撮像素子、カードスロットなどからなるカメラ部と、ディスプレーを備えるコントローラー部を分離して使える。両者を切り離して使うことで、撮影の自由度を高めた。

 2015年には「EX-FR10」の後継として、レンズを35mm判換算で21mmから16mmに広角化するとともに、高速連写に対応した「EX-FR100」を発売した。

 EX-SA10 GSETはこのモデルをベースに、コントロール部の機能をスマホに肩代わりさせた。スマホの画面は4~5.5インチ程度とEX-FR100の3インチ(コントロール部に搭載)よりも大きく、タッチパネルに対応しているので操作性もよい。さらに各種アプリの開発も容易だ。スマホがこれだけ普及した今、その力を借りない手はない。

テニスやダンスへの横展開も

 EX-SA10 GSETの主要ターゲットは、「上達に熱心でスコアで100や90を切りたいと思っているゴルファー」(同)である。

 課題は、飽きられずに使い続けてもらう“仕掛け”にある。「我々ハードウエアメーカーは可視化は得意だが、その先が課題。スキルアップに役立つアドバイスなどの情報をどう提供していくかが重要になる」(同)。カシオでは、レッスンプロと組んでアドバイス情報を提供したり、腕時計などのセンサーが出力するデータと映像を組み合わせてさらなる分析情報を提供するなど、次に向けた検討をしている。

 さらに、テニス、ダンスなどフォームが重視される他のスポーツへの横展開も検討中という。

 コンパクト・デジカメの世界市場はここ数年、前年比2~2.5割減のペースで縮小する厳しい状況が続いている。こうした中、今回のように「ユーザーが求める場所にカシオが蓄積してきたカメラ技術を適切に注入していけるか」(同氏)。スポーツ市場はデジカメメーカーにとって、未開の領域であるとともに、生き残りのカギを握っているのかもしれない。