カメラは、カシオが提供するスマホアプリ「Connect for GOLF」で操作する。同アプリを起動すると、近距離無線通信のBluetoothでカメラと接続し、カメラが内蔵するWi-Fi機能をオンにして通信状態となる(初回のみペアリングボタンを押して接続設定をする必要がある)。この状態で撮影すると、動画が自動的にWi-Fi経由でスマホに転送される。その際、動画は画像解析によってアドレスからフィニッシュの部分を抽出、つまりスイング前後の無駄な部分を除いてスマホに送られる。
撮影時に「セルフモード」を選ぶと、アプリの画面に手のマークが表示される。打席でアドレスをしている状態でも、クラブなどでマークの部分をさえぎるとカウントダウンが始まり、1人でスイングを撮影できる。
2画面再生で自分の過去と比較
スイングは「Analyzer for GOLF」という別アプリでチェックする。動画のスローモーション再生のほか、直感的な操作で画面上にラインを引いてスイングをチェックできる。通常、ゴルフのスイングチェックでは、アドレス時の映像に所定のラインを引いて、スイング中に面(スイングプレーン)にブレがないか、正しい体重移動ができているか、無駄な上下動が起きていないか、などをチェックする。
例えば、スイングを後方から撮影した動画で、ボールと首、ボールとクラブのシャフトにラインを引き、その間(Vゾーン)にスイング面が納まっているか、をチェックしたりする。
Analyzer for GOLFでは、撮影した動画の2画面表示も可能だ。過去に撮影したスイングと現在のスイングを比較したり、手本とするプロのスイングと比較したりできる。
カシオはこれまでも、撮影した動画にラインを引いてスイングを分析できる、ゴルファー専用のデジカメなどを販売してきた。ただ、デジカメではディスプレーのサイズが小さくて見にくかったり、キー操作が中心であるため使い勝手に難があったりしたという。
スポーツ雑誌の誌面に革命
カシオがスポーツにおけるパフォーマンス分析に目を向けるようになったきっかけは、あるエポックメーキングな製品の開発にある。2008年3月に発売した、当時としては他を圧倒する高速連写を実現したデジタル一眼レフカメラ「EX-F1」だ。一般的な一眼レフカメラの連写機能は6~8フレーム/秒だったところ、EX-F1は60フレーム/秒(600万画素)、動画では最高で1200フレーム/秒の撮影を可能にした。
こうした高速連写に対応したカメラは、価格が100万~200万円もする特定用途向けにはすでに存在した。しかし、EX-F1はそれを一気に10万円台まで引き下げたため、技術・科学分野の研究や実験、そしてスポーツカメラマンの間で一気に広まった。「2008年夏以降、ゴルフ雑誌やテニス雑誌の誌面ががらりと変わった。スイングの連続写真が、それまでの動画から切り出したものから、高画質の写真に切り替わった」(同氏)
EX-F1の評判はしだいにスポーツ界に広まり、ゴルフではタイガー・ウッズ選手のコーチなどが使い始めたほか、レッスンプロなども取り入れるようになった。
2009年にはEX-F1の技術をベースに小型化を実現した、高速連写のコンパクトデジカメ「EX-FS10」を発売した。一般のゴルファーの中にはこのモデルを購入し、ディスプレーに液晶保護フイルムを貼ってマジックでラインを引き、スローモーション動画を再生してスイングをチェックする人が出てきた。