たとえスタジアムに行けなくても、スポーツはライブで、友人や他のファンとともに楽しみたい――。2018FIFAワールドカップ(W杯)ロシア大会でのサッカー日本代表の活躍、そして2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの自国開催を控え、「ライブビューイング」や「パブリックビューイング」の需要が急速に高まっている。

 こうしたなか、パナソニックは没入感がある360度映像を遠隔配信して新たな視聴体験を提供する「映像空間ライブ配信ソリューション」の実証を開始した。2018年度内の提供開始を目指す。パナソニック システムソリューションズ ジャパンは、2018年6月19~20日に開催された「SPORTS ENTERTAINMENT TRADE SHOW 2018」(東京国際フォーラム)に同ソリューションを参考展示した。

 スポーツバーなどの飲食店内に、遠隔のスタジアムで開催されている試合の360度映像を視聴者の周囲を取り囲むようにプロジェクターで投影し、VR(仮想現実)ゴーグルなどを使わなくても、あたかもスタジアムにいるかのような没入感を体験できることを目指す。もちろん、仮設のパブリックビューイング会場などへの配信も可能である。

3台のプロジェクターで4面投影

 SPORTS ENTERTAINMENT TRADE SHOW 2018で展示したのは、パナソニックが協賛するガンバ大阪の試合をゴール裏のスタンドから撮影し、それを分割・位置合わせをして3台のプロジェクターで前・左右・上の4面スクリーンに投影するデモ。スクリーンで囲まれた場所に立つと、あたかも自分がゴール裏のスタンドにいるかのような感覚になる。3台のプロジェクターだけで、前面と左右、上面の4スクリーンに継ぎ目のない映像を投影するために、プロジェクションマッピングで培った位置合わせの技術を活用しているという。

「SPORTS ENTERTAINMENT TRADE SHOW 2018」での映像空間ライブ配信ソリューションのデモ。3台のプロジェクターで前・左右・上の4面スクリーンに試合映像を投影。あたかもゴール裏のスタンドにいるような没入感を覚える
「SPORTS ENTERTAINMENT TRADE SHOW 2018」での映像空間ライブ配信ソリューションのデモ。3台のプロジェクターで前・左右・上の4面スクリーンに試合映像を投影。あたかもゴール裏のスタンドにいるような没入感を覚える
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 撮影したのは、パナソニック製の業務用360度カメラ「AW-360C10/AW-360B10」やハイエンドのミラーレス一眼レフカメラ「LUMIX DC-GH5S」。いずれも4Kで撮影するが、それをフルHDに変換して投影している。

 360度カメラで撮影した周囲が“歪んだ”映像を、通常の四角い部屋に投影するために、大型映像施設のシステム構築などを数多く手掛けるオリハルコンテクノロジーズと協業した。同社の投影ソフトウエアを活用することで四角い部屋に違和感がなく投影できるだけでなく、放送映像をピクチャーインピクチャー(PinP)表示するなど独自機能を持つ。ライブの試合映像のほかに、選手情報や得点状況、リプレイ映像などの現地情報、飲食店のメニューなど投影場所の独自情報などの合成表示も可能とする。

 さらに、壁面ごとにプロジェクターを設置しなくても壁面数よりも少ない台数で投影が可能なため、機器コストの削減が図れるという。

音楽のライブ配信にも期待

 なお、撮影した映像は、顧客の要望に応じてネットワークを介して多地点にリアルタイム配信が可能とする。多地点へのリアルタイム配信はNTTぷらら、富士通の協力によって実現していくという。

 スポーツバーのほかに、展示会やイベント会場など仮設施設への映像配信、カラオケボックスなどへの音楽ライブ配信を用途として見込んでいる。