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スポーツIT革命の衝撃

「テレビ品質」が必須 ライブ配信、米NBCが示した教訓

2017/06/28 05:00

内田 泰=日経BP社デジタル編集部

 「2020年に向けて、家庭での動画コンテンツの消費のうち、ストリーミングのビジネスが大きく伸びていく」――。スポーツ観戦の“テレビからの解放”、つまりインターネットを通じた試合動画のライブ配信ビジネスが世界で熱を帯びている。

米NBCUniversal社傘下のNBC Sports Group Digital部門 CTOのEric Black氏
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 冒頭の発言の主は、五輪や米プロアメリカンフットボールNFLの優勝決定戦「スーパーボウル」などの巨大イベントのライブ配信で業界の先頭を行く、米NBCUniversal社傘下のNBC Sports Group Digital部門 CTO(最高技術責任者)のEric Black氏である。

 同社は、2008年の北京五輪でのサービス開始に向けて自らライブ配信のインフラを構築。以来、サービスを約10年間提供し、累計で1億ドル以上の投資をしてきた。2016年5月には、ライブストリーミングやVOD(ビデオ・オンデマンド)サービスを提供したい外部企業のニーズに応え、その配信を担う新会社「Playmaker Media」を設立した。

 2015年に手掛けたイベントは約5000件だったが、2016年はそれが1万5000件以上に急増。「市場は急成長しており、イベントのサイズや種類が過去より大規模化している」(Black氏)。

 昨年来、国内でもJリーグやBリーグの試合のスマートフォン(スマホ)などに向けた有料のライブ配信サービスが始まっているが、今後はより多く、そして大規模なスポーツイベントがライブで配信され、収益化に向けた試行錯誤がなされるだろう。

 NBC Sports GroupのBlack氏は2017年6月12日、米アカマイ・テクノロジーズ社の日本法人が主催したイベントに登壇し、スポーツイベントのライブ配信ビジネスを取り巻く環境や期待、同社の取り組みなどを解説した。以降では、同氏の講演要旨をお伝えする。

 なお、アカマイ社はネットでの動画配信のインフラとして不可欠な「コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)」の最大手で、NBC Sports Groupも同社の技術を使っている。CDNはネット上に、動画ファイルをキャッシュするサーバーを分散配置し、視聴者から最も近いサーバーから動画を効率的に配信する仕組みである。

過去最大はリオ五輪

 「歴史上、最も数多くライブで配信されたスポーツイベントは2016年のリオデジャネイロ五輪」(Black氏)である。

 リオ五輪では、合計6755時間のライブストリーミングコンテンツが提供された。ユニーク・ユーザー数は1億人に達し、合計で27.1億分(4.5億時間)がライブで視聴されたという。NBC Sports Groupは、2018年の韓国・平昌(ピョンチャン)五輪、2020年の東京五輪を含め、2032年まで米国向けに五輪競技をライブ配信する権利を保有しているという。

過去の大規模イベントでのライブストリーミングの実績(図:NBC Sports Group)
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 五輪以外では、2015年のスーパーボウルでの実績も紹介した。同時視聴者数は130万人で、1分当たりに換算すると平均視聴者は80万人。そして合計で2億1300万分(355万時間)の動画がライブで視聴されたという。

 現在、力を入れているのが、Playmaker Media社が契約した、米自動車レースNASCARのライブ配信サービスだという。

 NASCARは2017年2月、スポーツ界では初という、世界120カ国・地域を対象にした有料課金サービス「TrackPass」を開始した。Playmaker社が配信を担っている。

NASCARが世界120カ国・地域を対象に提供しているライブ配信の有料課金サービス「TrackPass」(図:NBC Sports Group)
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