新商品の企画を検討する際、多くの企業では、過去商品の企画資料、および売上実績などをインプット情報として使用しています。また、過去商品のユーザーに対して実施したヒアリングやアンケートから改善要望を収集し、新商品の企画に反映させている企業も多く見受けられます。しかしながら、ユーザーの要望を新商品企画に反映したにもかかわらず、目標としていた売り上げを上市後に達成できない、という声をよく耳にします。

 過去商品のユーザー要望を理解し、新商品に反映することは重要な取り組みです。しかしながら、組織として継続的に商品企画の質を向上させるためには、1つの商品企画への反映にとどめるだけでなく、商品企画プロセス全体にフィードバックすることが大切となります。今回は、企業活動として企画品質を向上させるための取り組みを紹介します。

企画品質とは

 新商品の企画を評価するために用いる考え方のひとつに「企画品質」があります。企画品質とは「ターゲット顧客のニーズに対して、製品の機能が要求を満たしている程度」と定義することができます。企画品質を高い基準で満たした場合、対象商品を使用した顧客の満足度を高め、結果として商品の成果指標(売り上げなど)に寄与します。一方、企画品質が低い場合、顧客の満足度は低くなり、期待した成果を達成することは難しくなるでしょう。

 企画品質の定義を分解すると、2つの要素で構成されていることが分かります。

[1]ターゲット顧客のニーズを適切に把握する
[2]顧客要求を満たす製品機能を抽出する

 多くの企業においては、[2]の基準は達成しており、定義した顧客要求に対して適切な製品機能を抽出できています。QFD(品質機能展開)など、顧客要求を製品機能に落とし込む手法も広く普及しています。

 しかしながら、[1]の観点では課題が存在する場合が多いのではないでしょうか。商品企画のプロセスの中で、適切にターゲット顧客のニーズを把握できていないことが多いように見受けられます。本記事では、特に[1]の「ターゲット顧客のニーズを適切に把握する」ことに重点を置き、企画品質の向上に向けた検討プロセスを紹介します。