本コラムは、数々のイノベーションで広く知られる3Mグループにおいて、大久保孝俊氏が体得したイノベーション創出のためのマネジメント手法を具体的に紹介します。大久保氏は、自身で幾つものイノベーションを実現しただけでなく、マネジャーとして多くの部下のイノベーションを成功に導きました。

前回:イノベーションは設計でマネジメントできる

見取り図には4つのポイントがある

図3 イノベーションの見取り図
図3 イノベーションの見取り図
連載では、この見取り図に肉付けしながら、イノベーションを成功に導くマネジメントのあり方を紹介していく。
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 ではイノベーションをいかにマネジメントすればよいのだろうか。本連載では、筆者の体験を交えながらなるべく具体的に「イノベーションの設計図」を紹介していく。その足掛かりとして今回はまず、その見取り図を示す(図3)。イノベーションの見取り図は、大きくは「個の設計(個を動かすカギ)」と「組織の設計」に分かれる。組織の設計はさらに、「イノベーションを創出させるマネジメント」「イノベーションを育む企業文化を構築する仕組み」「変わらないトップマネジメントの姿勢」から成る。

 これだけだと具体的なイメージが湧きにくいかもしれないので、少し説明したい。企業のイノベーションにおいて最も重要なことは、新しい価値を顧客に提供し、それによって利益拡大と持続的成長を図ることだ。新しい価値をつくるには、ルーティンワークから外れた新しい挑戦が不可欠になるので、前述のように、「失敗を恐れない挑戦心が大切」とか「絶対にあきらめない心が大事」などと言われるわけだ。

 これらは前述の「個を動かすカギ」に関する部分だが、心構えという抽象的なレベルにとどまらず、具体的な対処法にまで進みたい。マネジャーはイノベーションを担う部下と積極的にコミュニケーションを取り、部下が挑戦心とあきらめない心が持てるように支援しなければならない。こうしたことを実践するための複数のアプローチをこれまでの経験から筆者は体得している。それを本連載で紹介する。このような具体的なアプローチは、組織の設計に関する3つの項目に関しても、もちろんある。これらも順を追って紹介していくが、今回は全体的なイメージをつかんでいただきたいと思う。