鍵はスポーツ×エンタメ×アート

 ディー・エヌ・エー代表取締役会長で横浜DeNAベイスターズ オーナーの南場智子さんとよく話をしますが、これまで日本のスポーツ界では「タニマチ探し」が重要な仕事でした。例えば、サッカー好きなオーナーがいたらお金を出してもらうというやり方ですが、それでは長続きしません。スポーツビジネスを日本できちっと成立させなくてはならないのです。

 従来日本では、スポーツは教育に直結しているのでお金の話をしてはいけないような雰囲気がありました。でも、実際にはお金を使うので、マネタイズのスキームを考えないといけない。我々は岡田メソッドなどを横展開して販売するなど、さまざまなスキームを構築しています。スポーツビジネスには、ものすごい“オープンスペース”があると感じています。

 でも、欧米のやり方をそのまま日本に持ってきてもうまくいきません。例えば、欧州では週末は店が閉まっていてやることが少ない。その中でサッカー場は数少ない選択肢です。米国は大半の人口が地方に住んでいるため、スポーツをテレビで見る比率が高い。だから、放映権料が一般に日本の10倍と高かったりする。

 一方、日本ならディズニーランドに行くなど週末にできることがいっぱいある。その中で、サッカー場を選んでもらうにはどうしたらいいのか。サッカーが面白い、強いだけではダメなんです。

 だから私は、スポーツとエンタテインメント、アートを融合させて、サッカーを知らない人が来ても、サッカーに負けて悔しかったとしても、最後は「楽しかった」と言って帰ってもらえる場を創らないといけないと考えています。スポーツを教育と考え、エンタメと一緒にしたがらない人も多いけれど、私はそれが生き残る道だと思っています。例えば、FC今治のクラブスポンサーである吉本興業の芸人がスタジアムに来ていろんなイベントをやり、それを楽しみに来る人たちもいる。サッカーがもちろんメーンですが、その周りに“小さなワクワク”を散りばめることが重要です。

テクノロジーの導入が不可欠

 そのとき、テクノロジーを活用したスタジアムのスマート化は不可欠な要素です。スマートスタジアムで有名な米国の「リーバイス・スタジアム(Levi's Stadium)」では、スマート化によって物販が従来比で4割伸びたそうです。これはすごい数字です。

 FC今治の5000人スタジアムにもWi-Fiは導入されています。これから“面白い事”をトライするために絶対に必要だからです。さらに、スマート化していればファンの行動履歴などのデータを取得して、ファンエンゲージメントをプッシュできます。将来はアウェーの試合をスタジアムでVR(仮想現実)で見せ、アウェーのスタジアムに雨が降っていたら、霧を降らしたり・・・。そうなったらアウェーの試合でも稼げますね(笑)。

 我々は第二創業期を迎え、これからさまざまなプロジェクトを仕掛けていきます。構想を実現し、事業を成長させるためにも、プロの経営人材がどうしても必要です。今集まってくれている社員たちと同様、私の夢・理念に共感してくれる人材に来ていただきたいと思っています。(談)