―― 資金面以外の課題はありますか。

鈴木 資金不足のほかに、利権構造が複雑という問題があります。具体的には、スタジアム、フランチャイズ、物販を別々の組織が運営していて、ステークホルダー間の調整が多いことが阻害要因になっています。

 私は、総務省が主催した「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」の「スポーツ×ICTワーキンググループ、スポーツデータ利活用タスクフォース」の構成員を担当していましたが、そこで以下のような内容を提言しました。

1. 地方での「スタジアム・アリーナ改革」は地方創生の一環なので、助成金など支援策を設けてほしい

2. 現状、スタジアムの立地によっては広告・景観規制があって、演出や広告の表現方法に制限がある。プロジェクションマッピングのように自由に壁を使ったり、大型スクリーンによる多彩な演出ができない場合がある。「特区」のような制度をつくって、広告・景観規制を緩和してほしい

3. そもそもIT系の人材が地方で不足しており、スタジアムでのIT活用についてプランニングできる人材がいない。人材を採用する際に、国が支援してくれる制度を設けてほしい

スマートシティーの取り組みと連携

―― 鈴木さんが提言したように、スタジアム・アリーナ改革ではそれを地方創生にどう結びつけるかという観点が重要になっています。これに関してシスコ社はどのようなことに取り組んでいますか。

鈴木  シスコ社もスタジアムとその周辺までを含めた活性化の観点で「スマートシティー」構築のお手伝いをしています。街灯やごみ箱、パーキングスロット、環境センサーなどいろんなものをネットワークでつないで安全・安心な街づくりをしたり、効率的な都市の創造に取り組んでいるので、それらをうまくスタジアムと連携させたいと考えています。実際、そうした提案をしています。

 シスコ社が関与している案件で、2018年以降に実証実験の開始を検討しているプロジェクトがオーストラリアにあります。シドニーでクリケットの試合などに利用されるスタジアムが建設中なのですが、周辺のスマートシティーのサービスと連携させようという計画があります。

―― 最後に、東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーとしての取り組みを聞かせてください。

鈴木 東京オリンピック・パラリンピックでのシスコ社の主要なミッションは、競技が怠りなく遂行されるように、競技用・事務用のネットワークシステムを構築・運用することです。スタジアム間をネットワークでつないで、スタジアムで取得したデータなどを安全・確実にデータセンターやメディアセンターなどに送ったり、大会を運営するために必要な事務用のネットワークを構築・運用したりすることが最低ラインです。

 その上で、スタジアムやアリーナに高密度Wi-Fiやサイネージソリューションを追加で導入してもらうように提案するほか、他の協賛企業と協力して先進的な取り組みをしていきたいと思います。