開幕を目前に控えた男子のプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」(以下、Bリーグ)。ソフトバンクとの破格のスポンサー契約、試合のインターネット中継といったメディア戦略からファッション誌とコラボしたムック制作など常に大きな話題を振りまいて、バスケットボールの新たな価値創造を推し進めている。

 Bリーグの公式ホームページにはこうある。

「BはバスケのB。シンプルですぐに覚えられる印象的な名称です」
「Bは可能性。be動詞『Boys, be ambitious』のように、無限の可能性を秘めています」

 Bリーグが秘める未知なる可能性、このことを最も理解しているのがリーグ発足に尽力した日本バスケットボール協会の前会長で、現在はエグゼクティブアドバイザーを務める川淵三郎氏だろう。「“キャプテン”と呼んでほしい」と話す川淵氏に、Bリーグのすべてを語ってもらった。(聞き手は、上野直彦=スポーツライター)

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]

日本に「アリーナ・ビジネス」は無きに等しかった

―― これからの日本のアリーナ・ビジネスは大変有望だと思っています。バスケットボールは暑い沖縄でも盛んですし、雪が積もる秋田でも盛んです。これからBリーグが盛り上がって、あちこちにアリーナができてくると地域スポーツは変わってくるかと思います。ただ、現状は大変厳しい状態ですね。

川淵 今まで日本に「アリーナ・ビジネス」は無きに等しかったと言ってもいいでしょうね。「アリーナに出かけると、何となくアットホームで、何となくワクワクする」、そして「これからここで行われるバスケットボールや、バレーボール、あるいは今度は卓球のようなスポーツをエンジョイできる!」。そういうエンターテインメント性のあるアリーナが日本には全くありません。

 今後は日本に新しい文化として、そういうアリーナがどんどん生まれなければならない。地方創成という観点から言えば、冬場でも楽しめるバスケットボールというのは、秋田などでは最も望ましいスポーツにもかかわらず、知事が初めは反対しましたからね(笑)。

 スポーツの価値というのは、これからますます高まっていく。アリーナはバスケットボールのためだけではなくて、バレーボールやフットサルでも同じように使える。卓球はドイツではプロスポーツとして成功しています。卓球では、だいぶ前から木村(興治・国際卓球連盟元副会長)さんから相談を受けています。僕は、今をおいて卓球のプロ化を成功させる時はないと思いますね。今が最高の時です。そのためにも、やはりアリーナは絶対に必要なんです。バスケットボールのことだけを考えているのではありません。

―― 卓球のプロ化ですか!? 素晴らしいと思います。是非実現してほしいです!

川淵 繰り返しますが、バスケットボールのためだけでなく、すべての室内競技に喜んでもらえるためのアリーナを造ることが必要だと、僕は思っています。

 国内の八十数カ所の体育館を調べたんだけど、だいたい3000人収容、土足厳禁、物販禁止という施設が大部分で、土足OK、物販OKという体育館は二十数施設でした。これではスポーツをエンジョイできるアリーナなんて日本には存在していないのと同じです。「アリーナ」というよりは、やはり「体育館」と呼ぶ方が、より実態として分かりやすい。長岡市に新しいアリーナ(アオーレ長岡)ができましたが、ああいう施設が本当のアリーナと呼ぶにふさわしい。同じようなアリーナが全国各地にたくさんできると、特に冬は東北地方などにはもってこいでしょう。