NBAに学ぶ
Bリーグは「デジタルマーケティングの徹底推進」と「代表、リーグ、クラブの権益の統合」という2つの事業方針を打ち立てました。デジタルマーケティングを推進してデータを集め、“スーパーデータベース”を作ることを目指しているわけですが、「データの活用」という点で参考にしているものがあります。
それは米プロバスケットボールリーグNBAの「TMBO(Team Marketing&Business Operation)」という組織です。これはNBAに所属するコンサルティンググループで、チケッティングに関するさまざまなデータを収集・分析して各クラブにフィードバックをしています。過去には米プロ野球リーグのMLB(メジャーリーグ)もこうした組織を作ろうとしたものの、あまりうまくいってないようです。
ではなぜ、NBAはうまくいっているのか。実際にTMBOの方々にヒアリングしたところ、その理由は「MBA(経営学修士)ホルダーと現場を知っている人たちの“ハイブリッド型組織”にしたこと」と「トップのハイ・コミットメント」の2つに尽きると言っていました。
前者については、当初はMBAなどを持つ、いわゆる“頭のいい人”ばかりを集めてデータの分析を進めていたそうなのですが、現場の経験を通して仮説を出しているわけではなかったため、分析して出てくる答えが地に足がついていないようなものになっていたそうです。
そこでNBAは、各クラブの現場で働いていた人たちを組織に入れることにしました。現場経験のある人々と優秀な分析力を持った人々をハイブリッドにすることで、効果的な分析と施策の立案を実現できるようになっていったそうです。
もうひとつの「トップのハイ・コミットメント」は、(組織の)トップがチケットの販売が大事だと言い続けることです。私は以前プロ野球の球団経営に携わっていたのですが、「観客動員が大事だ」と口で言いつつも、経営会議などではスポンサー獲得の話から始まるチームが多くありました。
しかし私の経験上、それではあまりうまくいきません。NBAの場合、コミッショナーのアダム・シルバー氏が「チケットを売って観客動員を増やすことが大事」と各クラブにも伝え続けていったことがうまく回っている秘訣だと言っていました。
今、BリーグでもTMBOと同じことを始めようとしています。リーグとしてチケット販売を重視しつつ、コンサルティング会社などで実務経験がある人たちと、プロスポーツの現場で働いていた人たちで組織を作る。そして各クラブのデータ分析と課題抽出を実施し、チケットの売り上げに貢献することを目指しているのです。