Howは何かを考える

 では、今回のディスカッションのテーマでもある「スポーツは地方創生に役立つのか?」という問いについて、各氏の結論はどのようなものなのか。その答えは「スポーツは地方創生に役に立つ“ことも”ある」というものだった。宮田氏は「スポーツが世の中のすべてを変えるというのは少し乱暴だと思う」という考えを述べた上で、次のように語った。

 「これから地域活性化のためになんらかのイベントを開催しようとする場合、その土地が持つコンテンツを見せるために一番適している“How”は何かということを考えなくてはなりません。白馬の場合は北アルプスの雄大な自然がコンテンツであったので、その中を走るトレイルランが最適な“How”でしたが、違う場所では音楽フェスが最適かもしれないし、もっと別のイベントの方がいいかもしれません」(宮田氏)

 地域活性化のためには、その地域のコンテンツと掛け合わせる「何か」をしっかりと考えなくてはならないということだ。白馬の場合は、北アルプスの雄大な自然、東北風土マラソンは東北の名物グルメなどの観光資源があった。ツール・ド・東北の場合は「コンテンツ」というよりも、震災でダメージを受けた宮城県沿岸部の広域を多くの人に見てもらうため、広域を舞台にできる自転車競技と掛け合わせることになった。各大会とも、地域のコンテンツや見せたいものがまずあり、それを伝える最適な手段がスポーツだったという。

 当然のことではあるが、スポーツという「手段ありき」では地方創生は成功しない。地元の人々に受け入れられ、外部の人が参加したいと思わせるイベントを作り上げるには、その地域が持つ魅力は何か、その地域の何を見せたいかといったことをまず考えることからスタートしなくてはならないということなのだろう。