スポーツセンシングの澤田氏は、スポーツをする子供たち自身が「考える」重要性を指摘した。「スポーツを分析する、分析までいかなくても、プレーやゲーム内容を見て、考えるということが当たり前になることが、この産業の成長を決めるものになると思っています。学校体育や部活動は先生が、プレーやゲームの良し悪しを判断するものです。しかし、子供たち自身がさまざまなデバイスを駆使して撮影した映像や取得したデータを見て、分析をするという文化が根付き、日本中で当たり前になっていけば、この産業はさらに広がっていくのだと思っています」(同氏)。

 クライムファクトリーの馬渕氏は、スポーツビジネスを取り巻く環境の課題を指摘した。「スポーツIoTビジネスを1兆円という規模にするためには、スポーツに関わる企業が、不当に安い価格で請け負わないことが大切です。スポーツを営利目的と考えずに、PRやマーケティングの手段の一つとして考えている企業はまだまだ多い状況です」(馬渕氏)。

 「そうした企業が、例えば本来なら何千万もかかるようなシステムをサービスの一環として無料で請け負ってしまうと、私たちのような企業は太刀打ちできません。そのような状況が続いてしまっては業界全体にとって得策ではないので、ある意味、発注側と受注側が“持ちつ持たれつ”というような関係性を作っていかなくては、1兆円という規模には届かないと思います」(同氏)

 スポーツIoTビジネスの発展は、アスリートたちをより高度なレベルに導く可能性を秘めている。それだけではない。趣味として、健康づくりとしてスポーツをする人たちの楽しみもさらに拡大させるだろう。

 そうした未来を形作るためには、スポーツにおけるIoTの価値を正当に評価し、対価を支払うことが重要になる。そうなれば人材の受け皿ができ、「スポーツを分析する」文化も広がっていくことだろう。