CLIMB Factory 代表取締役の馬渕浩幸氏。「We Respect Sports」をモットーに、トップアスリートや、アスリートを支えるスタッフのためのITソリューションサービスを展開している
CLIMB Factory 代表取締役の馬渕浩幸氏。「We Respect Sports」をモットーに、トップアスリートや、アスリートを支えるスタッフのためのITソリューションサービスを展開している
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 「我々の会社は現在40名ほどの社員がいますが、その多くが親会社からの出向です。一から人材を受け入れていくのは、ある程度事業が成長してからでないと難しいという現実があります。特に日本では、“スポーツ”と聞くと華やかな世界に思えますが、この分野でお金を稼いでいこうとすると、非常にシビアです」(馬渕氏)

 「それは、お金を払うべき側に“タダでやってください”という考えがあるから。それでは会社も業界も大きくなっていかないので、しっかりとお金を取れるものを提供していく必要があると思っています」(同氏)

 では日本以外では、スポーツ産業に関わりたいという人は満足いく給与を得られているのかというと、実はそうとも限らない。スポーツ産業大国である米国でも似たような状況になっていると、橋口氏は語った。

 「米国では“金融業界やコンサルティング企業にいた優秀な人材がスポーツ業界に移ることも多く、その影響で人材に正当な対価が支払われている”ということがよく言われていました。私もその説を信じていたのですが、実際に米国のスポーツ産業の状況を見てみると、そうでもないんです。例えばオハイオ大学やマサチューセッツ州立大学には、スポーツマネジメントスクールという、スポーツ産業に人材を排出するための大学院があるのですが、そこの卒業生でも知識に見合うだけの給与はもらえていません」(橋口氏)

 「それは、そうした大学の卒業生のほとんどはスポーツ産業界に行きたがるので、雇用側が学生の熱意に甘えているからなんです。そのような状況のままでは、スポーツ産業が本当に発展し、持続していけるのかという疑問があります」(同氏)

 こうした話はIoTの分野に限ったことではない。プロスポーツクラブの運営スタッフなども、やりがいを持って取り組んでいるものの、満足いく給与を得られずに転職を余儀なくされることも多い。スポーツに限らず、いかなる産業であってもそれを支えるのは人である。その土台をしっかりと整備し働く人にとってもメリットがある環境を作らなくては、産業が発展していくのは難しいだろう。

(後編に続く)