スポーツを軸にしたまちづくりの取り組みで注目を浴びているのが、プロ野球・横浜DeNAベイスターズの「横浜スポーツタウン構想」だ。2011年にDeNAが親会社となって以降、さまざまな改革でフィールド内外で話題を呼ぶベイスターズは、まちづくりにどのような考えを抱いているのか。2018年5月に、4日間にわたって開催された「スポーツビジネス創造塾 第2期」(主催:日経BP総研 未来ラボ)に、同球団の木村洋太氏(執行役員 事業本部長)が登壇。ベイスターズがこれまでに実施してきた改革や、スタジアムづくり・まちづくりの施策を語った。その一部をレポートする。
「良質な非常識」を持って改革を進める
かつて「弱小」「お荷物」などと揶揄されることもあった横浜ベイスターズは、親会社がDeNAに変わり、横浜DeNAベイスターズが誕生してからの改革で生まれ変わり、今やチケットがなかなか取れないとの声が上がるほどの人気球団になった。球界参入時に掲げたコーポレートアイデンティティーは「継承と革新:横浜DeNAベイスターズは良質な非常識に挑戦し続けます。より多くのファンの皆様の夢と共に」というものだ。この標語に込められた思いを、同球団の木村洋太氏は次のように説明する。
木村 「単に“非常識への挑戦”だと、正しいことと正しくないことの区別がつかなくなってしまいます。そこで“良質な非常識”と表現することで、我々は常に“良質なもの”に挑戦をする、それが正しいことなのだという前提の下で活動をすることができる」
「良質な非常識への挑戦」という掛け声の下、ベイスターズは年々成長を遂げていく。かつて平均1万5000~1万7000人ほどだった1試合当たりの観客動員数は、2017年に平均2万7880人に。収容人数3万人弱の本拠地・横浜スタジアムの稼働率は実に9割を優に超える。
観客動員の伸びに合わせるようにチーム成績も上昇。2017年シーズンは、クライマックスシリーズからの「下剋上」で日本シリーズに進出した。業績も黒字転換し、「普通の企業として自立していける状況」になったと木村氏は話す。この過程で同氏は、「球団の売り上げと利益を最大化するという事業本部のミッション」を選手たちにも伝えていった。
木村 「良質なコンテンツを提供することで、お客様には提供価値の対価として納得いただいてお金を払ってもらえるようになります。良質なコンテンツをつくるために投資をして、球団の収入を増やす。それをさらに良質なコンテンツづくりにつなげる。この好循環が強固な事業体制の構築と、魅力的で強いチームづくりにつながっていきます。球団がお金を稼ぐ理由を、選手にきちんと理解してもらうことはとても大切です」
ベイスターズの前身である大洋ホエールズ時代から、球団には身売りなどによる混迷の歴史があった。それを繰り返さず、横浜に存在し続けることが地域のファンとのつながりを強固なものにする。そのためにも利益を生み出し続けることが大切であると木村氏は話した。