このようにスタジアム・アリーナが変わっていくと、スポーツを見に行く以上の対価を観客に与えることができます。チケット代以上の価値が得られればリピーターになり、スポーツ参画人口は増えて行くことになります。そのためにも、スタジアム・アリーナ改革を推進していきたいと思っています。

スポーツツーリズムで新たなビジネスチャンスを創出

 地域に社会的効果をもたらすのはスタジアム・アリーナだけではありません。スポーツ大会やイベントの開催、合宿・キャンプの誘致などにより、その地域のブランドを高め、経済効果も生まれます。

 例えば埼玉県さいたま市では、さいたまスポーツコミッションという団体が世界最高峰のサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」との共催によって、「ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」を行っています。2011年10月~2016年3月までで約374億円の経済効果を得ています。

 北海道網走市では、日本一の芝と呼ばれるような天然芝グラウンドを整備し、ラグビーをはじめとしたスポーツ合宿を誘致することで、年間約5.9億円の経済効果を生み出しました。沖縄県那覇市でも、温暖な気候と沖縄ならではの景観を活かしてNAHAマラソンを開催し、2009年には約16.9億円の経済効果がありました。

 このようなスポーツ大会をフックにして、その地域を訪れる人を増やすスポーツツーリズムが、今、注目されています。スポーツと観光を融合することで、スポーツ産業だけではなく、周辺産業も活性化し、新たなビジネスチャンスが創出されていくのです。

 2016年には、スポーツ庁、文化庁、観光庁が連携し、「スポーツ文化ツーリズムアワード2016」を開催しました。スポーツと文化・芸術を融合させ、その地域の魅力を向上させる取り組みは全国で行われていますので、その中の大賞を決める取り組みです。こうした情報を日本はもとより世界に発信していくことで、その地域に訪れる人を増やし、周辺産業の活性化へとつなげていきたいと考えています。

三庁連携プロジェクトの「スポーツ文化ツーリズムアワード2016」には、44件の応募があり、「東北風土マラソン&フェスティバル」など10のイベントが入選。2017年3月16日に大賞及び各庁長官賞が発表される(図:スポーツ庁)
三庁連携プロジェクトの「スポーツ文化ツーリズムアワード2016」には、44件の応募があり、「東北風土マラソン&フェスティバル」など10のイベントが入選。2017年3月16日に大賞及び各庁長官賞が発表される(図:スポーツ庁)
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「スポーツ×他産業」で拡大図る

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを筆頭に、これから先、日本では国際競技大会が続々と開催されることになっています。これは、全国各地でスポーツによる地域活性化のチャンスが到来することを意味します。

日本では、2017年の冬季アジア札幌大会を皮切りに、2026年までに12の国際スポーツイベントの開催が決定している(図:スポーツ庁)
日本では、2017年の冬季アジア札幌大会を皮切りに、2026年までに12の国際スポーツイベントの開催が決定している(図:スポーツ庁)
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 本日紹介したように、スポーツと他産業を融合することで、スポーツの参画人口を増やしていくことを重要視しています。例えばIT(情報技術)。例えばアート。スポーツの可能性は無限大ですので、そういった、いろいろな産業界の皆さまと協力をしていきながら、スポーツ産業を大きくしていきたいと思っています。(談)