スポーツ庁が経済産業省と共同で開催した「スポーツ未来開拓会議」に端を発し、日本におけるスポーツビジネスの熱が高まっている。この熱を確たるものにするためには、世界の事例を学び、さらに世界に通用する日本人の出現が急務となる。2016年12月に開催された「スポーツ×経営×人材 世界のスポーツビジネスを仕事にする」(主催:日経BP社、協力:TIASアソシエーション)に、電通スポーツアジア 代表取締役社長兼CEOの森村國仁氏、TEAM マーケティングの岡部恭英氏、SVホルン副会長兼 CEO/HONDA ESTILOマネジメント部 執行役員の神田康範氏という、実際に国際スポーツビジネス組織で活躍する3人が参加。後編では、各氏の講演とパネルディスカッションから見えた「世界のスポーツビジネス最前線で日本が活躍するために必要なこと」について探っていく。
(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

英語力は必須条件

 前編で紹介したように、今回のセッションに登壇した3氏は国際スポーツビジネスの最前線で活躍している日本人だ。彼らのように世界でスポーツビジネスに携わるために、日本人にとって必要になることは何か。岡部氏は「英語が話せないと、スタートラインに立てない」と指摘する。

「私は英ケンブリッジ大学の大学院で学びましたが、クラスでディスカッションをするとき、それをリードできる日本人はほとんどいませんでした。しかし、グローバルビジネスに携わる中では、マーケティング界の超有名人といわれるような人々とも議論することがある。そもそもの英語力がないと、そこにたどり着くこともできません」

 岡部氏は「本来は人間力やスキルの方が重要」と話したが、そうしたものを発揮するためにも、まずは英語力を身につけることが必須条件であるようだ。

日本に求められるのは「高いブランド力」

 一方、企業視点で考えたとき、日本企業が世界に打って出るために必要なのは「ブランド」であると岡部氏は説明した。

「UEFAは、UEFAチャンピオンズリーグでロゴやグラフィックスなどに徹底的にこだわり、ブランドをつくり上げてきました。チャンピオンズリーグが世界で人気なのは、もちろんサッカーの質の高さはありますが、ブランド価値の高さにも理由があります」(岡部氏)

 ブランド価値を向上させるためには、「優れたデザイン」や「ストーリー」、その2つから紡ぎ出される「親和性」がカギになるという。そうした要素を持ったものは、自然に高価格になり、ハイブランドの確立につながると、岡部氏は話す。

「これまでの日本は安くて良いものを作ることに注力してきましたが、それだけではなくて、ブランド価値を高めることに取り組んでいかなければならない。日本ならばそれができると思います」

 岡部恭英氏。TEAM マーケティング Head of Asia Sales。スイス在住。サッカー世界最高峰UEFAチャンピオンズリーグに関わる初のアジア人。UEFA(欧州サッカー協会)マーケティング代理店「TEAMマーケティング」のテレビ放映権/スポンサーシップ営業 アジア・パシフィック&中東・北アフリカ地区統括責任者。NewsPicksプロピッカー。連載は「スポーツビジネスに挑む日本人たち」「サッカーの力」など。SBAスポーツビジネスアカデミー アドバイザリー・ボード。TIAS(筑波大学院国際スポーツアカデミー)特別講師。ケンブリッジ大学MBA。慶應義塾体育会ソッカー部出身(写真:加藤 康)
岡部恭英氏。TEAM マーケティング Head of Asia Sales。スイス在住。サッカー世界最高峰UEFAチャンピオンズリーグに関わる初のアジア人。UEFA(欧州サッカー協会)マーケティング代理店「TEAMマーケティング」のテレビ放映権/スポンサーシップ営業 アジア・パシフィック&中東・北アフリカ地区統括責任者。NewsPicksプロピッカー。連載は「スポーツビジネスに挑む日本人たち」「サッカーの力」など。SBAスポーツビジネスアカデミー アドバイザリー・ボード。TIAS(筑波大学院国際スポーツアカデミー)特別講師。ケンブリッジ大学MBA。慶應義塾体育会ソッカー部出身(写真:加藤 康)