世界の自動車レース愛好家から、その走りと風貌にちなんで「モンスター」と呼ばれている男がいる。「モンスター田嶋」こと、田嶋伸博氏だ。7歳の頃からレーサーを目指したという66歳の田嶋氏は今年、世界で2番目に古い自動車レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」で、米国人以外で初めて殿堂入りを果たした。2011年まで6連覇を果たし、2012年からは電気自動車(EV)に乗り換えて、今も過酷な山岳レースに挑み続けている。極限の状態で「エンジンをしゃぶり尽くした」という男はなぜ、EVに賭けているのか。その理由を聞いた。
<b>田嶋伸博 (たじま のぶひろ)</b>氏<br /> レースの走りとその風貌から「モンスター田嶋」と呼ばれる。1950年6月28日生まれ。石川県出身。7歳にしてレーシングドライバーになることを決意し、大学生時代にアルバイトからレースの世界に飛び込む。デビュー戦で優勝し、その後、国内ダートトライアル選手権、環太平洋地域の国際ラリー、国際ヒルクライムの3つのカテゴリーのレースに主に参戦。世界で2番目に古い自動車レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」には88年から参戦。95年には日本人初の総合優勝、2006年から2011年まで6連覇を果たし、2007年に世界記録を樹立。2011年には「10分の壁」を破った。2012年からは電気自動車に乗り換え、2013年に電気自動車部門優勝。電気自動車として初めて「10分の壁」を破っている。2016年、米国人以外で初めて殿堂入りを果たす。電気自動車普及協会(APEV)の代表理事。「TEAM APEV」としてレースに挑む一方、自動車の開発などを手掛けるタジマモーターコーポレーション会長兼社長でもある。アクションカメラ「GoPro」の日本総代理店も務める。
田嶋伸博 (たじま のぶひろ)
 レースの走りとその風貌から「モンスター田嶋」と呼ばれる。1950年6月28日生まれ。石川県出身。7歳にしてレーシングドライバーになることを決意し、大学生時代にアルバイトからレースの世界に飛び込む。デビュー戦で優勝し、その後、国内ダートトライアル選手権、環太平洋地域の国際ラリー、国際ヒルクライムの3つのカテゴリーのレースに主に参戦。世界で2番目に古い自動車レース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」には88年から参戦。95年には日本人初の総合優勝、2006年から2011年まで6連覇を果たし、2007年に世界記録を樹立。2011年には「10分の壁」を破った。2012年からは電気自動車に乗り換え、2013年に電気自動車部門優勝。電気自動車として初めて「10分の壁」を破っている。2016年、米国人以外で初めて殿堂入りを果たす。電気自動車普及協会(APEV)の代表理事。「TEAM APEV」としてレースに挑む一方、自動車の開発などを手掛けるタジマモーターコーポレーション会長兼社長でもある。アクションカメラ「GoPro」の日本総代理店も務める。

―― 「パイクスピーク」の殿堂入り、おめでとうございます。

田嶋伸博(以下、田嶋):ありがとうございます。大きな記念の年に殿堂入りできたことを、大変光栄に思っています。

 というのも、今年はパイクスピークの100周年だったんですね。この100周年に殿堂入りのご指名をいただいた。とても栄誉なことです。日本ではあまり知られていないレースですが、ヨーロッパでもアメリカでも、空港のパスポートコントロールのところで「おめでとう」なんて言われるんですよ。あるミュージアムにいたら、何人も飛んできて一緒に写真を撮ってくれ、サインをくれと。日本ではモータースポーツはあまり脚光を浴びていませんが、海外は違いますね。歴史がありますから。パイクスピークも、インディ500マイルに次いで2番目に古いレースなんですよ。

 そしてもう1つ、私にとって大きな意味があるのは、来年2017年は、私がパイクスピークに最初に挑戦してから30周年なんです。さらに言えば、私がレーサーになりたいという夢を持ったのが7歳の時でした。そこから数えれば、60周年に当たります。

 子供の頃からレースに憧れていて、いつしか、自動車雑誌に掲載されるパイクスピークの写真に魅了され、いずれこういうレースに出たいと思っていました。アメリカのチームからオファーがあったのが1987年。僕はヘルメットだけ持って、最初はアメリカのチームのドライバーとして参戦しました。

 振り返れば、長かったですね。今年、私は66歳ですが、自分が言うのもなんですけど、ひたすら頑張っているというか(笑)。

―― パイクスピークはどんなレースですか。

田嶋:アメリカのロッキー山脈にあるコースは100年間、ずっと変わりません。ただ、2011年までは砂利道でしたが、それ以降は舗装されてアスファルトになりました。ですので、最初はラリーカーが中心でしたが、最近はどちらかと言うとレーシングカーに変わってきています。

 標高2800mにあるスタートラインから、頂上の4300m地点近くまで、約20kmのコースを10分足らずで走破するレースです。6月末の開催なので、下はハワイ、上はアラスカのような気候となり、気温差も激しい。コースは普段は観光道路ですが、これほど難しいコンディションの一般道を走る競技は、他にありません。

(写真提供:タジマモーターコーポレーション)
(写真提供:タジマモーターコーポレーション)
「パイクスピーク2016」の様子はこちらでご覧になれます。