―― 「パイクスピーク」の殿堂入り、おめでとうございます。
田嶋伸博(以下、田嶋):ありがとうございます。大きな記念の年に殿堂入りできたことを、大変光栄に思っています。
というのも、今年はパイクスピークの100周年だったんですね。この100周年に殿堂入りのご指名をいただいた。とても栄誉なことです。日本ではあまり知られていないレースですが、ヨーロッパでもアメリカでも、空港のパスポートコントロールのところで「おめでとう」なんて言われるんですよ。あるミュージアムにいたら、何人も飛んできて一緒に写真を撮ってくれ、サインをくれと。日本ではモータースポーツはあまり脚光を浴びていませんが、海外は違いますね。歴史がありますから。パイクスピークも、インディ500マイルに次いで2番目に古いレースなんですよ。
そしてもう1つ、私にとって大きな意味があるのは、来年2017年は、私がパイクスピークに最初に挑戦してから30周年なんです。さらに言えば、私がレーサーになりたいという夢を持ったのが7歳の時でした。そこから数えれば、60周年に当たります。
子供の頃からレースに憧れていて、いつしか、自動車雑誌に掲載されるパイクスピークの写真に魅了され、いずれこういうレースに出たいと思っていました。アメリカのチームからオファーがあったのが1987年。僕はヘルメットだけ持って、最初はアメリカのチームのドライバーとして参戦しました。
振り返れば、長かったですね。今年、私は66歳ですが、自分が言うのもなんですけど、ひたすら頑張っているというか(笑)。
―― パイクスピークはどんなレースですか。
田嶋:アメリカのロッキー山脈にあるコースは100年間、ずっと変わりません。ただ、2011年までは砂利道でしたが、それ以降は舗装されてアスファルトになりました。ですので、最初はラリーカーが中心でしたが、最近はどちらかと言うとレーシングカーに変わってきています。
標高2800mにあるスタートラインから、頂上の4300m地点近くまで、約20kmのコースを10分足らずで走破するレースです。6月末の開催なので、下はハワイ、上はアラスカのような気候となり、気温差も激しい。コースは普段は観光道路ですが、これほど難しいコンディションの一般道を走る競技は、他にありません。