系統安定化に寄与できる風車に

――今後、日本から世界的な風車メーカーが成長していくことは難しいですか。

名古屋産業大学大学院の清水幸丸教授
名古屋産業大学大学院の清水幸丸教授
(出所:日経BP)

清水 三菱重工にはやや厳しいことを言いましたが、同社にとって不幸だったのは、やはりRPS法によって国内市場が停滞したことです。加えて、米国でGE(ゼネラルエレクトリック)との特許紛争が始まったことで海外では売りにくくなりました。それと並行して国内風力市場が急減したので、売り先がなくなってしまいました。

 とはいえ、同社は、洋上風力には取り組んでおり、風車から撤退したわけではありません。現在では、富士重工の風車部門を買収した日立製作所が国内市場で健闘しています。日本製鋼所は2014年に風車の部品交換で160億円の特損を計上しましたが、これを教訓に品質管理を高めてきており、今後、盛り返すと期待しています。

――風車でも中国製が高いコスト競争力でシェアを伸ばす可能性はありますか。

清水 欧州メーカーが数十年、試行錯誤してここまで技術を蓄積したように、風車の開発はそれほど簡単ではありません。ただ、すでに欧米や日本の風車メーカーが主要部品に中国製を使う動きが出てきました。しかし、エネルコンが内製に戻したように、やはりコスト優先で部品を調達すると信頼性が低下します。

 日本メーカーには、多少時間がかかっても、安易に主要部品を外注せずに、ものづくりの基本に戻り、じっくりと内製品によって積み上げて欲しいと思っています。

 国産の風車メーカーにとっては、FITで日本の風力市場が再び拡大し始めたことが最大の追い風です。加えて、今後は、蓄電池併設型の風力発電システムなど、電力系統への負担を減らす制御技術が重要になります。日本には、こうした蓄電池制御に優れたノウハウを持つ企業もいます。系統安定化を含めた新技術をリードしていけば、日本企業が風力分野で世界的に戦えるチャンスも出てきます。