米Apple社、米Starbucks社、米Oracle社、ユニクロ、ANA(全日本空輸)、米Uber社、米Airbnb社…。

 いずれも成功し注目を集めている著名な企業だが、これらの企業の共通項がお分かりだろうか?

 それは、企業戦略として「CX」に取り組んでいることである。

量よりもむしろ質

 かつては高い経済成長率と人口成長率 を誇った日本も、少子高齢化や人口減少に伴い需要が成熟し、飽和状態に達する定常化社会と化した。日本経済が長期的な過剰供給構造にあることを指摘する 経済学者も少なくない。

 供給過多の社会においては、経済学の原則からすれば価格は安くなり、企業間の競争が激化することは想像に容易い。グローバル市場での競争激化、商品のコモディティー化やソーシャルメディアの発達による消費者の影響力増大などの背景より、単なる価格競争だけでは顧客を自社に惹きつけることが難しくなっている。

 このような厳しい市場環境の中、企業の新たな差異化戦略として注目を集める概念が「カスタマーエクスペリエンス(CX;顧客経験価値)」である。商品やサービス自体を訴求するのではなく、顧客が商品を購入する前から、購入し、実際の使用に至るまでの一連のプロセスにおける「経験」を通して得られる顧客にとっての「価値」を訴求する考え方だ。

 CX戦略の主眼は、量よりもむしろ質。すなわち、その企業または商品が顧客にどのような価値をもたらしているのかが求められる。