カム山を切り替えて使うタイプの可変バルブタイミング機構では、バルブタイミングの変更に合わせてリフト量も変えたカム形状を備える。例えば、「出力追求型カム」と「燃費追求型カム」を切り替え、これに伴ってバルブリフト量も変化する。この場合、リフト量は2段階に限定されるためスロットルバルブの代替え手段とはならない。それでも、エンジンの負荷状態や回転数によりリフト量を切り替えることは吸気効率を高めるためには有効な手段である。
こうしたカム山切り替え型の可変バルブリフト機構には、ホンダの「VTEC」やドイツPorsche社の「VarioCam Plus」、同Audi社の「AVS」、富士重工業の「i-AVLS」などがある。VarioCam Plusとi-AVLSはドイツSchaeffler社の「スイッチングタペット」を利用したもので、機構は同じ。
ホンダのVTECは性格の異なる2種類のカムを搭載する可変バルブタイミング機構である(図3)。それを進化させたのが「i-VTEC」で、「低回転用カム」と「高回転用カム」の切り替えに、カムスプロケット位相による可変バルブタイミング機構を追加したもの。低負荷時と高負荷時のカムプロフィールの切り替えとバルブタイミングを最適化する。これにより、運転状態に応じてバルブのリフト量と開度を適切に調整できるようにしている。
Porsche社のVarioCam Plusは、カム山切り替えに加えて、カムスプロケット位相による可変バルブタイミング機構を組み合わせている(図4)。タペットを二重構造として、油圧によりピンを出し入れすることで外側のタペットを固定とフリーに切り替える。