日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第4回:DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション) 2系統クラッチで迅速に変速、低燃費と走りの楽しさ両立」の転載記事となります。

 DCTについてもギアや入力軸を組み合わせることで変速を実現する構造はMTと同じく、メーカーによる違いはほとんどない。変速機が横置きか縦置きであるか、クラッチが湿式か乾式か、クラッチの配列が同心であるかタンデム配置か、ということが構造上の違いになる(図3、図4)。

図3 縦置きDCT
奇数段のクラッチと偶数段のクラッチの二つがある。MTの構造そのままのギアユニットを電子制御により自動化しているのが分かる。各コントロールロッドに組み込まれたソレノイドバルブがシフトフォークを動かし、油圧で制御する湿式多板クラッチと連携して俊敏な変速を実現している。写真はドイツPorsche社のDCT「PDK」。
[画像のクリックで拡大表示]
図4 リアデフと一体化したDCT
フルタイム4WD(4輪駆動)対応のためにリアデフと一体化したDCT。Porsche社のDCT「PDK」のクラッチが径の異なるクラッチを径方向に1枚に並べる同心型なのに対して、図(日産GT-R)のクラッチは径が同じものを軸方向に並列に配置するタンデム型だ。変速機構の構成はPorsche社のものと基本的には変わらない。
[画像のクリックで拡大表示]

 二つのクラッチを同心に配置するのは、主に横置き変速機で全長を押さえるための措置だ。一方、タンデム配置とするのは主に縦置き型で、クラッチ径を抑えて変速機の高さを抑えることができる。またフライホイールの外径も抑えることで慣性モーメントによる抵抗を軽減することもできる。