日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第3回:マルチリンクサスペンション 乗り心地と高速走行時の操縦安定性を高次元で両立」の転載記事となります。

サスペンションシステムには、乗り心地と操縦安定性を両立させることが求められる。最近、高級車を中心に増えているのがマルチリンクサスペンションである。構造が複雑でコスト高となりやすいが、自動車メーカーは部品の標準化などで低コスト化を図り、採用車種を拡大している。

サスペンションを構成する主な部品
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 サスペンションはタイヤとボディーの間に位置するクルマを支える機構である。走行中の衝撃を吸収して乗り心地を向上させるとともに、サスペンションのストロークを柔軟に変化させることで路面に凹凸があってもタイヤを路面と接触させて車体の動きを安定させる。またコーナリング時には、車体をロールさせることによって、タイヤのグリップ力を引き出す役割もある。

 サスペンションの構造や構成する部品の強度は、クルマの目的によって大きく異なる。車体の重さや高速性能、乗り心地やハンドリングなどの性能をどのレベルまで求めるかによって、サスペンションに対する要求も変わってくるためだ。車重が重く、高速性能や乗り心地などの要求度の高い高級車ほど、サスペンションは高度化、複雑化する傾向にある。