日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第2回:ターボチャージャー 排ガスの圧力を吸収し、エンジンに空気を押し込む」の転載記事となります。

 ダウンサイジングやアトキンソンサイクルなどの技術によってエンジンの効率が高まると、排ガスに残っている熱エネルギーは減少していく傾向にある。ターボにとってはエネルギーを得られにくい状況になるが、エンジンの効率を高めるにはターボはこれからも必要な存在である。ターボチャージャーについてもさらなる効率向上が求められている。

 現在のところ、ターボチャージャーの効率は60%前後だといわれている。これはタービンの効率が82~83%、コンプレッサーの効率が81~82%であり、さらに機械的な損失を加えて算出したものだ。より幅広い領域で過給を実現するワイドレンジコンプレッサーホイールの開発や、内部構造の摩擦損失の低減、あるいはコンプレッサーハウジングのスクロール形状の改善といった、これまでの長い歴史の中ですでに十分熟成されたものであっても、細かな見直しをすることでより最適に稼働させる開発が進んでいる。

 2ステージターボは排ガスの圧力が高いディーゼルエンジン向きのシステムだが、これをガソリンエンジン向けに改良して実用化を目指しているのが三菱重工業である。

 二つのうち一つのタービンは動力に排ガスを使わず、モーター駆動とすることで低回転域の過給圧の立ち上がりの遅れを防ぐ。排ガスの圧力が十分に高まったらモーターを止めて、排ガスの力で過給する(図11、12)。

図11 可変式2ステージタービンのシステム(三菱重工)
三菱重工が提案する可変式2ステージタービン。低回転域では主に高圧ターボが作動し、中回転域は高圧と低圧の両ターボが作動する。高回転域は排気流量制御バルブを開いて直接低圧ターボを回して、小型の高圧ターボの過回転を防ぐとともに、吸気側もバイパスバルブを開いて大型の低圧ターボで十分に過給した空気をエンジンに送り込む。
図12 2ステージタービンの電動タービン
三菱重工が開発中の電動タービン。2ステージタービンの低圧側に組み込むことで過給初期の応答の遅れを改善する。排ガスが増えたら電動タービンの動作を停止する。IHIはセンターハウジングに電動モーターを組み込んだ同様のシステムを開発している。

 三菱重工の取り組みは、発進時にオルタネーター兼モーターで駆動力を支援するマイルドハイブリッドに目的は似ている。常時電動タービンを使うと消費電力の点で課題が残るが、過給立ち上がりの部分的な利用であればそれもクリアできる。