今回は、医療従事者のテレワークについての議論がありました。これを、患者の目線で考えてみたいと思います。例えば、突然具合が悪くなって病院に運び込まれたら、テレワークが実施されていたので医師がいなかった。こんな状況に直面した患者は、どう思うでしょうか。

経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課⻑の⻄川和⾒⽒(写真:加藤 康、以下同)
経済産業省 商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課⻑の⻄川和⾒⽒(写真:加藤 康、以下同)
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 おそらく、とても困惑するでしょう。しかし、この状況は必ずしも態勢が整っていないわけではありません。むしろ、テレワークをしているので遠隔地にいる専門医に診てもらうことができる。こうしたことをきちんと患者に説明する必要があると思います。

 患者がその医療機関にどういうことを求めているかについても見極めるべきだと思います。地域に根差したかかりつけ医には、患者に寄り添って話を聞くことが求められるでしょうし、高度な専門性のある医療機関であれば、短時間に多くの患者を診ることが求められるでしょう。

 つまり、医療機関ごとにクレド(信条)をはっきりさせて、対外的に示すことで患者の期待値をコントロールできると思うのです。もちろん、医療機関内部の働き方改革もクレドによって軸がしっかりすれば、スムーズに進むと期待できます。

ICT導入は過渡期

 働き方改革に、どうICTを活用していくかの議論についてですが、ICTツールの活用に当たっては、ITリテラシーの問題も考慮しなくてはいけません。ITリテラシーが高い業界の一つが、金融業界です。ICTへの投資が競争力を左右しているからです。こうした業界と比べると、医療従事者のITリテラシーはもう少し高めていく必要があると思います。

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 ただし、ITリテラシーは世代によって全く異なります。今の10~30代は、若いうちからICTツールに親しんでいるため、ITリテラシーが高いと思います。こうした世代が医療の中核を担う10~20年先を考えると、もう少し楽にICTツールを導入できるようになるのではないでしょうか。今はまさに、過渡期だと感じます。

 私の職場でも、6年前に新しいシステムを導入しましたが、導入直後は現場に戸惑いもありました。しかし、使ってみると仕事がはかどることを実感できたのです。
ICTツールは、導入した後は現場の状況に合わせて自由に使ってもらう、という意見が出ましたが、私もその意見に賛成です。活用することで業務が便利になるような機能については、自由にどんどん使ってもらえれば良いと思います。ただし、リスクを伴うセキュリティーの問題や、患者の個人情報の扱いについては、きちんと教育する必要があると思います。

 今は、自分の情報が病院の外に漏れることがないという前提で、患者が医師に情報を提供しています。しかし、ある日突然、自分の個人情報が全然違うところから出てきてしまったらどうでしょうか。病院に対する信頼は一気に薄れてしまうと思います。タスクシェアなどを考えると、患者の情報は病院の外にも共有しないといけません。その際に、どういうプロトコルで情報共有を行っていくかについては、慎重に考えていく必要があるでしょう。(談)