一番の利点は情報量の増加

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
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 デジタルヘルスの導入によってどのような利点があるのかについては、次のような意見が出た。「デジタルヘルスにより、多くの情報を定量化できるのではないか。例えば、病院での問診でしか取得できなかったような情報が、病院以外の場所にいても取れるようになる。デジタルヘルスによるオポチュニティーは大きいと感じている」(大塚氏)。

 製薬会社の柱である創薬にもたらすインパクトについては、「デジタルヘルスを使うことで、“全員には効かないが、こういう人には高い割合で効く”といった分類ができるようになり、薬の開発効率が大幅に向上するのではないか」と瀬尾氏が指摘した。

 高橋氏は、「健康な人と患者の線引きが、デジタルヘルスの登場によってなくなっていくのではないか」と切り込んだ。「例えば糖尿上の人は合併症を引き起こす可能性があるため、専門医の診断を定期的に受けてもらう必要がある。だが、医療機関が自宅から遠いなどの理由で、通院できず症状を悪化させてしまうこともある。デジタルヘルスの導入で、写真やバイタルデータを共有できれば簡単に健康状態をチェックできるようになる。そうすれば、症状を悪化させてしまう人や病気にかかる人が減ることが期待できる」(高橋氏)。

 これらの可能性を踏まえて、瀬尾氏は今後の製薬業界について次のように語った。「高齢社会や介護社会に対応できるものはデジタルヘルス。日本の製薬企業は新薬を出すのに苦労しているが、デジタルヘルスには新しいオポチュニティーやビジネスチャンスがある」。

 高橋氏によると、デジタルヘルスの一番のオポチュニティーはデータの蓄積でいろいろな応用ができることだという。「デジタルヘルスというと、どんなデバイスやインフラをつくるかに目が行きがち。だが肝心なのは集めた情報をどう医療や患者に還元するかであり、そこから考えればそのために必要なシステムは自ずと形作られていくはずだ」(高橋氏)。