ストロングハイブリッドは日本の特産品、今後は液晶テレビの二の舞も

 ストロングハイブリッド車は、エンジン駆動部と電動部の仕様や技術をかなり密に擦り合わせて開発する必要があります。電気自動車時代の到来が見えている現在、今からストロングハイブリッド車の開発に新たなリソースを投入できる企業は日本以外にはないでしょう。ストロングハイブリッド車は日本の特産品なのです。

 欧州自動車メーカーにとってのマイルドハイブリッド車の位置付けは、日本のストロングハイブリッドへの対抗策であり、電気自動車が主流になるまでのつなぎです。それとて開発負担が重くては導入に踏み切れません。導入がしやすい標準化された48Vシステムには、戦略的な価値があるのです。

 さらに、標準化しておけば、欧州メーカーだけではなく、中国など新興国のメーカーも導入しやすくなります。これによって、自動車メーカー間、サプライヤー間での競争原理も働きやすくなり、価格的にも魅力的な製品になると予想されます。

――なるほど、適用車種の広がりを加速し、さらには世界展開も狙いやすくなるのですね。日本の自動車メーカーやサプライヤーは、まずストロングハイブリッド車のニーズが高い日本市場を優先した戦略を立てがちですが、確かに世界戦略を当初から描けば、標準化した48Vシステムの強みが際立ちそうです。

 欧州メーカーの一番の狙いは、世界市場での自社競争力の維持・醸成にあります。標準技術の活用はその目的を達する手段です。車種ごとに徹底的に作り込むことを良しとする日本メーカーの文化とは異質であり、欧州メーカーの得意技でもあります。48Vシステム導入の潮流を加速し、大量生産につながる仕掛けを用意したのは、とても賢い戦略ですね。

 過去、日本製の液晶テレビは、カスタム部品の搭載で機能面の付加価値を持たせていました。しかし結果的には、標準化によるコモディティー化が進み、低価格の海外製テレビに世界シェアを奪われました。

 世界の潮流を見れば、48Vシステムを搭載したクルマの市場投入は、これからが本番です。技術的に見た48Vシステムは、2001年に市場投入された日本の先駆的な技術資産である42Vマイルドハイブリッドシステムと大きく変わらないと思います。日本メーカーが今後どのように舵を切っていくのか動向が気になります。