私達の組織ではICTを活用しながら、より良い働き方を実践したいと考えています。これまでの取り組みから見えてきたのは、ICTで情報連携の負荷を大きく減らせることです。

医療法人社団鉄祐会 理事長の武藤氏(写真:加藤 康、以下同) 
医療法人社団鉄祐会 理事長の武藤氏(写真:加藤 康、以下同) 
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 例えば総務省の実証事業では、ICTを用いた医療介護連携の仕組みを宮城県石巻市で運用しました。専門職や患者、家族への聞き取りなどから効果を検証したところ、やはり情報連携がスムーズになるという声が多かった。

 というのも、多職種連携の現場では電話やFAX、書類作成などにすごく時間を取られるのです。電話しても相手が不在なら掛け直さなくてはなりませんし、FAXは複数の送り先に別々に送信する手間がかかる。何かの確認のために念のため電話を掛けるという場面も多いです。ICTを導入することで、こうした負荷が大幅に減ります。

 負荷軽減にとどまらない、さらなる可能性もあるのではないか。例えば、優れた医療者のエッセンスとは何かを形式知化するのに、ICTが役立つのではないかと想像しています。

 医師にせよ看護師にせよ、対人能力のバラつきはかなり大きい。それをある程度標準化し、医療の水準を高めていくために、ICTが使えるのではないかと思うのです。例えば医師と患者、あるいは医師と患者家族のコミュニケーションにおける表情やストーリーテリング(語り)のあり方を抽出する。それを形式知にすることができれば、医療者の教育などに使えるでしょう。