働き方改革とそのための見える化は、強いリーダーシップのもとで行われなければ意味がないと考えています。リーダーの問題意識なしには、現場に“やらされ感”が充満するだけでしょう。

日本調剤 専務取締役の三津原氏(写真:加藤 康、以下同) 
日本調剤 専務取締役の三津原氏(写真:加藤 康、以下同) 
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 見える化の目的は、それを基にPDCAを回すことです。その時、「頑張れ」の掛け声だけでは、ただの根性論で効果はありません。マネジメント層が何らかのソリューションを示さなくては、現場は頑張りようがない。ソリューションを示しつつ改善を促す「論理的なチアリーディング」が必要だと考えています。

 調剤薬局では、処方箋の受付から監査、投薬、指導など一連の業務プロセスがあります。我々は各プロセスにどのくらい時間を要したか、それをどの薬剤師が担当したかなどを、作業内容とともにデータとして収集できる環境を構築しました。見える化した結果を基にグループごとに改善点を議論するだけでも、作業効率は随分変わってきます。

常にFAX利用が前提になっている

 大規模病院の薬剤部のように、サンプル数がある程度大きい環境になると、見える化によって業務の傾向がかなり良く見えてきます。薬剤師の経験の差によって、調剤の手際の良さにどれほど違いが出るかなどを分析できるわけです。

 一方、業務効率の良し悪しをどのような軸で評価するかはなかなか難しい問題です。基本的には多面的に評価すべきでしょうが、どこにフォーカスを置くかをはっきりさせることも同時に必要だと思います。そうでないと、なかなか改善につながりません。

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 医療現場の現状から強く感じるのは、「紙文化」を変えていくべきだということです。調剤薬局との関わりで言えば、例えば処方箋の電子化がある。電子処方箋が広く使われるようになれば、薬局側の労務負担は軽減されますし、処方箋情報のデータベース化もしやすくなります。

 まずは少なくとも、業務の多くをFAXに依存し続けている医療現場の状況を変えるべきでしょう。最近は薬剤師がトレーシングレポート(服薬情報提供書)を扱うことが増えていますが、そのやり取りもFAXに依存しています。何か新しい仕組みを導入しようとしても、常にFAXの利用が前提になる。これは良くないのではないかと思っています。(談)