働き方改革がうまくできていない職種の一つが、実はわれわれ国家公務員ではないかと。国家の緊急事態には24時間365日対応義務があるのはもちろん、国会対応業務や国会議員の要請があれば夜中でも応じなくてはなりません。

内閣官房 健康・医療戦略室 参事官の岡本利久氏(写真:加藤 康、以下同)
内閣官房 健康・医療戦略室 参事官の岡本利久氏(写真:加藤 康、以下同)
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 行政の幹部というのは政策プレーヤーとして働いてきた人が多く、組織人としてのマネジメント能力に長けた人は少ない。そのため、正直なところ部下の労務管理はあまりできていないのが現状です。

 一方、医療の分野にも「応召義務」があります。このため、労働基準法を機械的に当てはめると地域医療が崩壊するのではという声を聞きます。“患者のため”という精神はもちろん大切ですが、医療従事者の生活を犠牲にしていいわけはありません。(医療分野においても)労働基準法の本質を、しっかり守ることを前提にすべきだと思います。日本全体が働き方を変えようと取り組んでいる中で、「医療分野だけは特殊だから仕方ない」という考えを変えていくことができるか――。そこが大きなポイントだと受け止めています。

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 地域や患者が医療に何を求めるか。病気を抱えながら生きる人生に何を求めるかは、多様化してきています。医療や介護、あるいは障害に対する制度が縦割りになっている中で、このように多様化する地域社会に対して国は何ができるのかを考えていく必要があります。

 地域の課題に応じた施策を実行できるよう、制度間の壁を低くしたり取り払ったりする取り組みが今、国に求められていることだと考えています。働き方改革に対する施策は、同様の考えで取り組んでいくべきではないかと思っています。(談)