隠岐諸島の医療環境で最も大きな問題は、働き手がいないことです。島外から何とか人材を確保しようと情報発信に努めた甲斐があり、幸い今では毎年100人程度の医学生や看護学生、療法士などが当院に来てくれています。

隠岐広域連合立 隠岐島前病院 院長の白石 吉彦氏(写真:加藤 康、以下同)
隠岐広域連合立 隠岐島前病院 院長の白石 吉彦氏(写真:加藤 康、以下同)
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 そのうち毎年数名が就職してくれています。30人いる看護師の半数は、Iターンで地元就職した人たちです。

 高齢者や女性が働き続けてもらえるよう、定年延長制度を活用したり、主に職員対象の病児・病後児保育を院内で実施したりするなど、子どもが熱を出しても通常通り働ける環境づくりをしてきました。こうした仕組と仲間づくりが上手くいくと、高齢者や女性スタッフが離職することなく働き続けてくれます。

 常勤医に関しては、6人すべてが総合診療医ということもありますが、職歴で業務や責任負担が集中しないよう、ゆるやかな主治医制を採っています。外来診療では、(医師に加えて)問診する看護師1人、診察を補佐する看護師1人、医療秘書1人の4人体制で行っており、電子カルテ端末が各人に配置されています。私が電子カルテ端末に向かうことはほとんどなく、入力はすべてスタッフに任せ、カルテ承認のクリックをするだけです。

 病院医師の業務は、書類作成などの事務作業が非常に多い。しかしながら私は、紹介状や入院計画書などを書きません。当院ではこうした書類づくりをすべて医療秘書に任せています。他の医師にも同様の指導をしており、自ら書いていたら怒るぐらいです。

 こうしたタスクシェアリングを実現したことも一因となり、この病院で働きたいと思う医師が島外から来てくれ、上手く回せています。