「IoTを活用して、血圧変動の要因を解明したい」――。そんな思いで、島根県益田市が取り組んでいるのが、「益田市スマート・ヘルスケア推進事業」である。

 市民のバイタルデータを測定し、血圧変動の要因解明や個人に合わせた血圧管理の実現を目指したプロジェクトだ。益田市ではIoTを活用した実証実験を行う「スマートシティ構想」を打ち出しており、今回の益田市スマート・ヘルスケア推進事業は、その一環として行う。

益田市長 山本浩章氏
益田市長 山本浩章氏
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 具体的には、2018年10月から市内にある3つの企業の従業員と益田市職員の合計306人が、血圧と活動量、尿の成分を日々測定している。測定したデータは島根大学で分析され、どういう生活習慣によって血圧が上昇するのかを医学的に解明することを目指す。参加者には1カ月ごとに結果をまとめたレポートが返される仕組みだ。

血圧に関するレポートの見本(提供:島根大学)
血圧に関するレポートの見本(提供:島根大学)
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血圧に関するレポートの見本(提供:島根大学)
血圧に関するレポートの見本(提供:島根大学)
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 益田市がこうした取り組みを実施するのは、「脳卒中の発症率と死亡率が国の平均よりも高いことに危機感を抱いていたから」と益田市長 山本浩章氏は説明する。特に、40~69歳の男性の死亡率が高いという。

 脳卒中発症者の特徴を調べたところ、「6割の人が高血圧であると分かった」(山本氏)。若くして脳卒中を発症した人ほど、高血圧の治療を放置していたり、高血圧であることに気づいていなかったりするという。そこで、血圧コントロールが重要だと考え、血圧に関する項目を測定することにしたというわけだ。

 まずは、市民の健康管理への関心を高め、脳卒中や心疾患の発症抑制につなげたい考えだ。2019年度後半からは一般市民も対象にする予定で、「年間100~200人ずつ対象者を増やし、1000~2000人規模に拡大していきたい」と山本氏は話す。

使用する測定機器
使用する測定機器
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