年間最大140時間程度の削減が見込める

 介護現場では介護保険請求にからむ業務支援システムは導入されているが、手書きによる介護記録や介護計画作成をはじめとする生産性の低い事務処理作業の負担は大きく、介護職員のモチベーション低下や高い離職率を引き起こす要因の一つとされている。

 そこで、日本KAIGOプラットフォームの開発プロジェクトでは、介護記録業務の効率化や負担軽減を図るためにスマートフォンやタブレット端末用の介護アプリを開発。同ツールで収集した介護記録情報の他、ケアプランや介護計画、アセスメント情報、サービス内容などをデータベース化し、人工知能を活用して介護計画作成を支援することで業務負担を軽減しようという狙いだ。「利用者に対して1カ月1回の頻度で介護計画を作成した場合、人工知能によって1施設当たり年間最大140時間程度の削減が見込める」(中元氏)と期待は大きい。

 開発プロジェクトには、地元企業や大学を中心に多くの組織が参画し、コンソーシアムを形成している。人工知能技術については、機械学習などのノウハウを有する北海道大学発のベンチャー、テクノフェイス(本社:札幌市中央区)が開発を担当する。北海道大学情報科学研究科から人工知能ソフトウエア開発指導を受けている。

日本KAIGOプラットフォーム開発事業の連携体制
日本KAIGOプラットフォーム開発事業の連携体制
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 介護計画作成支援システムの基本は、各介護事業所から蓄積された介護記録やアセスメント情報、介護計画の情報をデータベース化し、独自の機械学習機能で解析を行い自動で介護計画を生成する。解析は過去の介護記録、バイタル情報などを基準として、アセスメントによる現時点を比較し、その変化から近似の介護計画を引き当てつつ次の介護計画を生成するという。具体的には、要介護者のパラメーター化、要介護者のカテゴライズ(分類)、介護計画の選定、介護計画選定の学習という4つのステップを踏む。

 人工知能が提示した介護計画は、そのまま適用されることはなく、現場の計画作成担当者がこれまで培ったノウハウを加えて介護計画を完成させる。「重要な点は、本人・家族がどのような状態改善や生活環境を望み、それを達成できるかである。介護事業者側の評価だけで作成される介護計画ではなく、本人や家族の評価・意思が反映された計画であることが重要だ」(中元氏)。人工知能はあくまで介護計画作成の支援というわけだ。