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“外商さん”を医療の世界にも

黒田知宏氏 京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授

2017/04/26 10:30
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス
 SNSやIoTを通じて大量のデータが医師に流れてきます。自分が集めようとしなくても情報が勝手にやってきてしまう。そんな中ですべてのデータに目を通しきれるでしょうか。このままでは医師が倒れてしまいます。

京都大学医学部附属病院 医療情報企画部 教授の黒田知宏氏(写真:加藤康、以下同)
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 時代は変わっていきます。診察室に来た患者に医師が状態を訪ねると、「自分の健康状態はSNSで公開しているのでそれを見てくれ」と言われた例もあるそうです。すべての情報を医師に集めようとするならば、“私のドクター”を持たないとどうにもならないくらいの情報量を送り付けることになってしまいます。しかし現実には、国民1人につき医師1人を付けるのは無理です。

 そうなってくると、送られてくる情報を処理する仕事をどこかで肩代わりしてもらわないといけません。「肩代わり」という表現をするとその程度の仕事…と思われてしまうかもしれませんが、例えば看護師や薬剤師、検査技師はそれぞれの分野の専門家です。同様に、情報の処理を最初からその道のスペシャリストにアテンドしても任せてもいいはずなのです。医師が本来こなすべき仕事はおそらく別のところにあるでしょう。

 情報通信技術が発達すると、発信源と末端をつなぐ線は増えていきます。この線が増えるほど自分でさばける人は少なくなります。すると間に入る人が必要となるのです。その“ハブ”となる存在をかかりつけ医にすることはもう無理だと思うのです。なぜならケアすべき範囲が医師の仕事の範囲を超えてしまうからです。

 では、どのような存在が間に入るべきなのか。例えば、医療とは別の分野ですが、モノを買うときに百貨店の外商さんという立場の人たちがいます。外商さんには、必ずしもその百貨店で取り扱っていないモノまで頼むことができます。あくまで利用者の立場に立ち、利用者が求めるモノを取り揃えてくれるのです。こうした外商さんのような存在が、医療の世界にも必要なのかもしれません。

ガイドライン、読み解けますか?

 3省4ガイドライン(関連記事)については、所詮ガイドラインだと思っている人も多いかと思いますが、実はこのガイドラインに違反すると、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の準拠を要件としている診療録管理体制加算が失われる可能性があります。すると、診療録管理体制加算をとっていることを要件としている入院基本料をすべて失うのです。これは調べて初めて気が付いたことですが、それくらい怖いことが書いてあるのです。

 問題なのは、何をすると何が起こるかが分からないことです。元々幅のある解釈ができる書き方がされている上に、それぞれの地方事務所で規制が解釈されているために、その解釈には幅が生まれてしまいます。事務所などと診療機関の間で解釈のずれが出てしまうと、そこからドミノ倒しでものすごく大きな損失つながってしまうのです。これを根本的に考え直さなくてはいけません。

策を講じるより、まずは損失勘定

 新たな医療の仕組みを考えるに当たり、避けて通れないのがコスト(誰がお金を出すのか)の問題です。

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 前回、“一人で生まれて一人で死んでいく”というフレーズを使いましたが、とある企業の方が、国内では健康関連の家庭用計測装置が売れないと話していました。今の日本の医療制度では病気になったら国が面倒を見てくれるから、国民は健康管理なんて興味がないのだというのです。その企業はすでに国内ではなく海外での商売に目を向けています。そういったことも含めると、国はどれだけ損をしているのでしょうか。

 介護保険の問題もあります。費用削減の策として行われている在宅介護は、家族が仕事を休んで介護を行う必要があります。これは納税者からの納税を失い、国としては大きな機会損失をしていることになります。あるいは、介護を行うために有能な社員が会社をやめてしまったり出張に行けなかったりと、さまざまな損失の可能性があるのです。

 まず考えるべきは、どれだけ損をしているのかを計算することではないでしょうか。“子どもを産むため”“親を介護するため”、本来諦めずに済んだ問題を諦めなくてはいけない…ということがないようにしないと機会損失はなくならないと思うのです。損失を算出した上で、それを取り返すために費用を出してもらえるよう働きかける必要があると思います(談)。

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