ネットサービス企業のGMOインターネットで特命担当技術分析官を務める技術者の新里 祐教氏が、IoT(Internet of Things)開発キットで遊んでみる連載企画の第2弾は、アルプス電気の「マルチ環境センサー評価キット」を取りあげる。免許不要の920MHz帯の無線通信を採用し、各種センサーを搭載した小型の子機と、パソコンに接続してデータを確認するUSB受信モジュールの親機がセットになる。920MHz帯の無線通信は、障害物を回り込み、Wi-Fiに比べると混信が少ないため、通信距離を稼げる特徴がある。子機には、環境センサーとして一般的な気圧、温湿度、照度に加えてリードスイッチを使った開閉センサーを搭載しており、幅広い用途に対応できる点を売りとする。(編集部)

 マルチ環境センサー評価キットはアルプス電気が国内の法人に向けて2015年に発売したIoT開発キット。920MHz帯の無線通信を利用し、各種環境センサーを搭載した子機と、パソコンに接続してデータを確認するUSB受信モジュールの親機がセットになっている(図1)。

ソーラーパネル式子機
ソーラーパネル式子機
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電池式子機
電池式子機
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USB受信モジュール
USB受信モジュール
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図1 920MHz帯で通信するアルプス電気の「マルチ環境センサー評価キット」
「電池式子機」はコイン電池(CR2032)を利用する

 子機は、太陽光パネルを搭載したいわゆるエナジーハーベスト式と、コイン電池式の2種を用意している。通常は法人向け限定で提供している製品で、親機と子機の価格はそれぞれ2万円。今回はアルプス電気のご厚意で、1週間だけお借りできたので、ちょっと駆け足で「遊んで」みた。

手のひらに収まるコンパクトサイズ、設定はターミナルソフトで

 子機の外形寸法は88.8mm×32.5mm×16.7mmで、手のひらに収まるくらいのコンパクトサイズだ。防水防塵で屋外でも利用可能な子機は、エナジーハーベスト式とコイン電池式で駆動電力の違いがあるものの、搭載しているセンサーは同じ。温度、湿度、気圧、照度センサーと磁気リードセンサーである。子機はこれらのセンサーから得られたデータを920MHz帯の電波で定期的に発信する。この電波を親機で受信し、USB経由でパソコンに取り込める。

 ではコイン電池式子機の中身を見てみよう(図2)。子機にはマイクロUSB端子があり、基板上にはUSB-シリアル変換チップがある。これは子機の設定に使う。パソコンにUSBケーブルで接続するとシリアルインタフェース(いわゆるFTDI)として認識される。ターミナルソフトなどを使って設定を送り込むと、デフォルトで20秒毎のセンサー情報の送信間隔を、20秒~36時間の間の値に変更できる。同様にして利用するチャネルや送信先親機のID設定も変更可能だ。

図2 920MHz帯の無線モジュールを搭載する
図2 920MHz帯の無線モジュールを搭載する
電池式子機「MES-EVAL-V2-T10 (電池)」の基板。ケースは簡単に取り外しできる。裏側の右側にアルプス電気のロゴが入った920MHz帯無線通信モジュールがある。なお、ソーラーパネル式子機は、ソーラーパネルとの組み立て構造上、ケースの取り外しは不可。アルプス電気によると両者の基板は電池部分を除いてほぼ同じ構造だという。
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