かつてエネルギー業界に「電力ベンチャー四天王」と呼ばれた経営者がいたことをご存知だろうか。2000年代前半に登場した黎明期のエネルギーベンチャーの中でも、とりわけ注目を集めた4人の創業経営者のことだ。

 2000年に上場したエネサーブの深尾勲氏、2004年上場の省電舎(現・省電舎ホールディングス)の中村健治氏、2005年上場のファーストエスコ(現・エフオン)の筒見憲三氏、そしてイーキュービックの岩崎友彦氏の4人である。イーキュービックは3社を追いかける形でベンチャーキャピタルからの資金調達に成功し、株式上場の準備に入っていた。

 掲載から15年が経過した今でも、筆者の記憶に残っている新聞記事がある。2003年4月17日付けの日本経済新聞夕刊に掲載された「電力VBトップ~技術に精通、省エネを売る」と題した記事で、4人の経営者が取り上げられた。

 中小企業から地道に会社を育てた「たたき上げ派」として、深尾氏(エネサーブ)と中村氏(省電舎)が紹介された。シンクタンク出身で海外事例導入やデータ重視の「理論派」として、筒見氏(ファーストエスコ)と岩崎氏(イーキュービックの創業直前)を取り上げた。そして、4人とも理工系出身で技術に強いという共通点があると解説している。

 大手電力の圧倒的な独占市場だった電力分野で、ビジネスモデルのみならず、創業経営者にフォーカスを当てた記事が掲載されることは、それまでにはなかったことだった。彼らは電力ベンチャーの旗手として注目され、その後のエネルギーベンチャーの目標となった。

 筆者は当時、電力ベンチャーの成長支援やIPO準備に関わっており、様々な交流を持っていた。そして、電力業界関係者やベンチャー投資家が彼らを「電力ベンチャー四天王」と呼んでいたことを記憶している。

電力ビジネスの構造変化がいよいよベンチャーを後押しする

 エネルギーベンチャーがブームと停滞期を繰り返しているのは、「復活期に突入するエネルギーベンチャー」で説明した通りだ。

 政策や制度変更、原油価格や為替レートの乱高下、大手企業の参入など外的要因に振り回されるためである。ベンチャーブームが起きても、数年後には外的要因の影響でブームがしぼむパターンが続いた。このため、日本では未だにエネルギーベンチャーが安定的に生まれる土壌ができていない。

 だが、ようやく潮目が変わる兆しが見えてきた。電力・ガスシステム改革やスマートメーターの本格導入、需要家の意識変化という大きな構造変化は、エネルギーベンチャーの躍進を後押しするのに十分な要素を備えている。

 2017年2月には、再生可能エネルギー発電ベンチャーのレノバが株式上場(IPO)を果たした。後続のエネルギーベンチャーのIPOへも期待が高まっている。

 エネルギーベンチャーは、今度こそ、絶好の機会をしっかりと掴み取る必要がある。その際に、これまでの歴史を学び直すことは有意義だろう。2000年代前半に活躍したエネルギーベンチャーを振り返り、これから活躍するエネルギーベンチャーの経営戦略や、投資家サイドの企業評価の観点での示唆を考えてみたい。