新年早々、4億円規模の料金誤算定が発覚

 東電PGが確定値の通知遅れを公表した後しばらく、目立ったトラブルが明るみに出なかったこともあり、電力各社のITシステムは徐々に安定していったかに見えた。ところが、である。2017年1月4日にまたしても、業界全体に影響を及ぼす致命的なトラブルが、新たに判明した。

 中部電が2016年4月~10月までの7カ月間、エリア内のインバランス量の計算を間違え、余剰インバランスを合計約5億5600万kWh過大に算定していたのである。原因は、全面自由化に合わせて稼働させた「インバランス算定システム」の不具合を見落としていたこと。自社小売部門の需要計画を過大に計上すると同時に、需要実績を過小計上していた。

 中部電の発表を受けて社内調査した北海道電も1月18日、2016年4月~11月まで8カ月間にわたりインバランス量を誤算定し続けていたことを公にした。連系線を介してエリア外を流入出した電力量を需要実績に考慮する計算式が、インバランス算定システムのプログラムから漏れていた。その結果、本来は8カ月間で合計1億9700万kWhの不足インバランスだったところ、1億6100万kWhの余剰インバランスと計算した。

 インバランス量の誤算定の影響が、全国の小売・発電事業者に波及することは言うまでもない。一般送配電事業者と小売・発電事業者との間で精算するインバランス料金の単価は、JEPXが市場価格をベースに算出する。その際、広域機関がエリアの一般送配電事業者から集めた全国規模のインバランス状況を反映する仕組みになっている。

 中部電と北海道電が誤ったインバランス量を広域機関に通知し続けたことで、それを受け取ったJEPXが算出する単価は当然、本来の金額と食い違ってくる。資源エネルギー庁の調べでは、1kWhあたり平均0.06円、最大約4円低い単価が、全国でインバランス料金の精算に使われることになった。

 エネ庁が2017年2月に公開した資料によると、インバランス量の誤算定分を控除したあるべき単価で精算した場合に比べ、一般送配電事業者が小売・発電事業者に支払うべき金額は8カ月間で合計3億3000万円程度少なかった。逆に、小売・発電事業者に追加請求すべき金額も合計約3900万円あった。

 中部電と北海道電は自社からの精算額が足りなかった小売・発電事業者には差額を支払い、追加請求の対象事業者には支払い意思を確認のうえ請求手続きをするとしている。

質を伴わないITの影響を強く再認識

 未曽有と言っても過言ではないほど大きな問題を頻発させてきただけに、「電力業界はトラブル付いている」といった印象を需要家に与えたに違いない。しかし、信頼回復の術はある。

 まずはありきたりだが、ITへの依存度が極めて高く、質を伴わないITシステムが広範囲に多大な影響を及ぼすという点を、個々の事業者が再度、強く認識することだ。