単純な料金競争と一線を画した戦略を採る新電力ベンチャー、みんな電力(東京都世田谷区)が、ブロックチェーンを活用した電力取引プラットフォームの提供に乗り出した。

 電力は発電事業者から系統を介して需要地に届けられる。そのため、需要家が実際に消費した電力がどの電源に由来するものかを“色付け”し、明確に識別することができない。

 しかし、みんな電力の電力取引プラットフォームを用いれば、系統内で混ぜ合わさった電力の電源を、デジタル証書によって仮想的に色付けして識別。そのうえでブロックチェーンの台帳の記録から、需要家が消費した電力をトラッキングし、電源を特定できる。

 発電や消費をした電力量を証明するデジタル証書「トークン」を発行するとともに、発電事業者と需要家との取引履歴をブロックチェーンの台帳に記録する。台帳の記録を参照することで、需要家はどこの電源から電力を調達したか、発電事業者はどの需要家に電力を供給したかを確認できるようになる。

 みんな電力は、デジタル証書の発行や、ブロックチェーンを使って取引履歴を記録するシステムのテストを3月中に終え、4月からシステムのパイロット運用を開始する。パイロット運用では複数の発電事業者と需要家を募って取引履歴を実際にブロックチェーンで管理するなど、電力取引プラットフォームの実効性を8月末まで検証し、秋にもサービスを始める予定だ。

3連弾のサービスで再エネ活用を加速へ

 第1弾のサービスは、電源のトラッキングである。

 太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギー電源に由来する電力の取引を記録する「RE100プール」を開設。そこに参加する発電事業者と需要家との電力取引の内容をすべてブロックチェーンの台帳に残し、発電事業者と需要家の関係を1対1で紐づけて、電力の供給と消費の実績を管理する。

電気をブロックチェーンでトレースする
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電気をブロックチェーンでトレースする
みんな電力が提供する電力取引プラットフォームのイメージ

 みんな電力はまず、環境意識が高い企業を対象に電源トラッキングサービスの利用拡大を図る。具体的には、事業で消費する電力の全量を再エネで賄う「RE100」を志向する企業のニーズを取り込む。加えて、電力の地産地消を目指す地方自治体や、電源に占める再エネの比率を高めたい新電力の参加を見込む。

 サービスの第2弾として、みんな電力は余剰電力のシェアリングサービスの提供を想定している。住宅の太陽光発電や風力発電で余った再エネ電源由来の電力を、企業間や個人間、企業と個人が、RE100プールを介して直接取引できるようにする。

 さらに第3弾では、再エネ電源由来の電力調達手段として、RE100を志向する海外企業の間で活用が広がりつつある「バーチャルPPA(Power Purchase Agreement)」のサービスに踏み出す。企業が発電事業者の再エネ電源に投資し、その対価として、投資した電源で発電した電力をRE100プール経由で長期間にわたって受け取る。企業が消費電力の再エネ比率を高めやすくなるだけでなく、発電事業者にとっても設備投資がやりやすくなるなどの利点があることから、バーチャルPPAの普及は再エネ活用を加速すると期待されている。