カリフォルニア州のガス漏れ事故で緊急設置
米国でもカリフォルニア州で大型蓄電池プラントの建設が相次いでいる。州政府が再エネ導入に伴う需要急変対策として、同州の3大電力会社に対して蓄電池の設置を義務付ける州法「AB2514」を施行したことが大きい。加えて、2016年10月にロサンゼルス近郊のアライソ渓谷(Aliso Canyon)天然ガス貯蔵施設で大規模なガス漏れ事故が発生したことが蓄電池普及に拍車をかけた。
同貯蔵施設は閉鎖され、発電用ガスの不足から需要ピーク時に停電する恐れが生じた。2016年1月にはカリフォルニア州知事のジェリー・ブラウン氏が非常事態宣言を発表するに至り、これを受けてCPUC(カリフォルニア州公共事業委員会)は急遽、合計出力約100MWの大型蓄電池システムの導入を決め、入札により同州の大手3社に建設を要請した。同案件を落札し、大型蓄電池システムを短期間で建設したのが、米テスラ(Tesla)、米AESエナジーストレージ、米アルタガス(Altagas)などである。
ハワイ州でも太陽光発電システムの導入が増えるに伴い、17~22時に需要のピークが立つようになり、太陽光発電の出力と需要がマッチしない問題がクローズアップされるようになった。
カウアイ島では、電力事業者のKIUC(Kauai Island Utilities Cooperative)が2030年までに電力需要の70%を再エネで賄う計画を掲げ、メガソーラーの建設が相次いでいる。2015年末には再エネ比率が40%近くになり、太陽光パネルの発電が止まる夕方以降の需要急増に対応できない問題が深刻になってきた。
そこで新規のメガソーラー案件では蓄電池を併設し、昼間にメガソーラーの出力を抑制せずに余剰電力を蓄電池に蓄え、17~22時の需要ピーク時に放電することによって系統を安定化させる。テスラは同島で、13MWのメガソーラーと52MWh/13MWのリチウムイオン蓄電池を併設した設備を立ち上げ、2017年から稼働を始めている。
調査レポート「世界 再エネ・ストレージビジネス総覧」では国内外の豊富な事例を集め、ビジネスモデルを類型化し、収益モデルや背景となる市場環境を分析した。
国内でも一般送配電事業者(大手電力の送配電部門)が調整力を調達する「需給調整市場」導入の検討が進んでいる。世界の先行事例は国内で新ビジネスを立ち上げる際にも参考となるだろう。