資源エネルギー庁が2018年10月に突如、提案したバイオマス発電のFIT比率(固定価格買取制度を利用する燃料の比率)に関する制度変更案が、太陽光発電の長期未稼働問題と並んで再エネ業界を揺るがせました。

 関係者の働きかけによって「自由民主党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」(再エネ議連)が動き、エネ庁が当初提案を大幅に見直す形で12月20日に大枠は決着したものの、制度の詳細についてはまだ明らかになっていません(「再エネ議連が動いた、バイオマスFIT改正騒動」参照)。

 バイオマス発電をめぐっては、これまでも発電事業者の予想を上回るスピードと規模で制度が変更されています。今回導入される新制度の内容とバイオマス発電に関する政策動向で留意すべきポイントを、西村あさひ法律事務所の川本周弁護士に解説してもらいました。

【質問】なぜ、バイオマス比率の変更に新たに制限が設けられることになったのですか。

【回答】端的に言えば、バイオマス発電による賦課金の増加を抑えるためです。近年のFIT制度の改定の大部分が、賦課金抑制を目的としています。

 バイオマス発電の基本的な仕組みは火力発電です。バイオマス燃料だけを燃料として燃やす「専焼」と、石炭など非バイオマス燃料を併用する「混焼」があります。また、バイオマス燃料には「未利用材」や「一般木材」など複数の種類があり、燃料の種類ごとにFIT価格が異なります。そのため、毎月の総売電量に各区分ごとのバイオマス燃料の投入比率、つまりバイオマス比率を乗じることで、その区分のバイオマス燃料に係る売電量を算定します。

 バイオマス比率は、FIT認定を申請する際に「申請事業計画使用燃料一覧」として、燃料区分ごとに記載することになっています。しかし、FIT入札の落札案件を除き、FIT認定取得後にバイオマス比率を増加・減少させる場合、FIT価格への影響なく事前変更届出の提出によって行うことが可能となっています。

 例えば、バイオマス燃料と石炭の混焼としてFIT認定を受けていた事業を、バイオマス専焼へ変更することも可能です。その結果、FIT認定を通じてエネ庁が把握・想定していた範囲を超えて、バイオマス発電の発電量や賦課金を通じた国民負担が増えるという事態が問題となりました。

【質問】今後、バイオマス比率の変動はどのような制限を受けるのですか。

【回答】「バイオマス比率の変動」は大きく分けて2種類あります。1つが混焼の場合で、バイオマス燃料と石炭などの非バイオマス燃料との間の比率の変更です。もう1つは専焼で、バイオマス燃料のうち未利用材と一般木材との間の変更など、FIT制度上の燃料区分の異なる燃料間の比率の変更です。

 まず、非バイオマス燃料との間の比率の変更については、売電契約の締結日とバイオマス発電に関する新制度が施行される2019年4月1日の先後関係により扱いが異なります。